[I-O-53] 心周期に伴う胎児大動脈径変動 -正常心と心疾患心での比較-
キーワード:胎児心機能, 後負荷, ファロー四徴
【諸言】胎児診断技術の進歩により、出生後に用いられる心機能評価法が胎児にも応用され、拡張能、収縮能や前負荷の評価が少しずつ可能になってきている。しかし、胎児血圧の測定が不可能であることより、後負荷評価は依然限られている。我々は2010年の本学会で、胎児大動脈径の心周期に伴う変動(%change AoD)が上行大動脈ドプラ波形加速時間(ACT)と緩やかに相関し、胎児心後負荷を示す一指標となる可能性を示した。今回は、正常心と異常心における%change AoDの比較より、%change AoDの臨床的意味につき考察を行った。【方法】胎児心エコー検査時にsino-tubular junctionにおける大動脈径測定と同部のドプラ波形記録が可能であった正常胎児85例、心疾患胎児38例(大血管転位(TGA)4例、ファロー四徴(TOF)10例、単心室系疾患(SV)10例、心室中隔欠損(VSD)10例、大動脈縮窄・離断(CoAIAA)4例)を対象とした。%change AoDを(収縮期大動脈径-拡張期大動脈径(AoDd)/AoDd)×100(%)と定義し、各症例の初回計測時の週数、大動脈ドプラ波形より得られる各指標との関係と疾患による相違を検討した。【成績】%change AoDは全体で週数による変化はなく、ACTとは正の(p=0.032)、AoDdとは負の(p=0.0018)相関関係がみられた。TOFにおいて正常心と比較し有意に小さく(p=0.050)、他の疾患と正常心に差はなかった。各症例で多変量解析で正常心における%change AoDは一回拍出量(SV)、AoDdと有意な関連をもち、SV, AoDdを用いて推定された%change AoDは2.50SV-4.35AoDd+38.87で示された。各疾患の%change AoDの推定値との比はTGA 中央値1.24 , TOF 0.86, SV 1.03, VSD 1.06, CoAIAA 0.91で、各疾患を正常心と比較するとTOFでは有意に低値(p=0.038)であった。【結論】%change AoDは、ACTと正の相関を示し、後負荷の指標となる可能性がある。TOFで低値を示し、胎児期TOFの大動脈壁弾性異常を示唆するものであるかもしれない。