[II-O-22] センダイウイルスベクターを用いた肺動脈性肺高血圧症(PAH)に対する遺伝子治療の可能性
Keywords:肺動脈性肺高血圧症, ナトリウム利尿ペプチド, 遺伝子治療
<背景>機能獲得型NPR-B変異体を用いたPAHに対する治療の基盤研究を行い、本学会で結果を報告してきた。これまでの研究は、遺伝子導入にアデノウイルスベクターを用い、ヒト肺動脈平滑筋細胞(PASMC)およびSugen肺高血圧症ラットに変異型NPR-Bを導入して効果を検討してきた。<目的と方法>より安全で高い遺伝子導入効率を目的として、ヒトでの臨床試験実績のあるセンダイウイルスベクター(SeVV)を用いてPASMCおよびヒト肺動脈内皮細胞に変異型NPR-Bを遺伝子導入し、効果を検討する。動物への遺伝子導入の方法を気管内噴霧から血管内投与に変更し効果を検討する。<結果>Mut-NPR-Bを導入したPASMCにおいては、細胞内cGMPは著増し(GFP, 0.19±0.11 pmol/ml; WT, 38±30 pmol/ml; Mut, 2500±580 pmol/ml)、増殖能の低下を認めた(Edu陽性細胞の割合:GFP, 18±1.7%; WT, 12±2.3%; Mut, 8.5±1.0%)。一方、Apoptosisの増加は認めなかった。ヒト肺動脈内皮細胞でも同様の結果を認めた。次に、SDラットに対してコントロールSeVVを開胸下肺動脈内投与し、48時間後に肺血管特異的にSeVVが導入されたことが確認できた。<結語>SeVVを血管内投与する方法で、より安全で効率よい肺動脈への遺伝子導入が確認でき、CNP/NPR-B経路活性化治療への応用の可能性が示された。現在、Sugen PAHモデルラットに開胸下肺動脈内投与で変異体ウイルスベクターを導入し、血行動態や組織学的な改善が見られるか検討中である。