[II-P-062] QT短縮症候群が疑われた12歳男児
Keywords:QT短縮症候群, 着用型自動除細動器, SQTS
【背景】QT短縮症候群(SQTS)は、イオンチャネルなどの遺伝子異常が原因の遺伝性不整脈疾患として知られ、QT時間の短縮と致死性不整脈で特徴づけられる症候群である。SQTS患者の心停止リスクは非常に高く、そのピークは生後1年未満で4%、その後は1年に1.3%の心停止リスクがあり、40歳までに40-50%が心停止を経験すると報告されている。今回、SQTSを疑わせる救命された心室細動の症例を経験したので報告する。【症例】症例は生来健康な12歳男児で、釣りをしている最中に突然の心停止が出現。父親によるバイスタンダーCPRが行われ、計3回のAEDによる除細動で心拍再開し、AEDには心室細動が記録されていた。脳低体温療法、アミオダロン持続静注を含めた集中管理により、神経学的後遺症なく救命された。学校心臓検診(約3ヵ月前)の12誘導心電図にてQTc 340ms(3心拍平均)とQT短縮傾向を認めたことから、QT短縮症候群と診断し、ICD埋め込みを行う方針とした。皮下型ICD(s-ICD)を希望されたため、日本でのs-ICD発売までの待機期間は着用型自動除細動器(WCD)を使用した。【考察】SQTSは稀ではあるが非常に予後不良な疾患である。しかしQT短縮症候群の診断基準はいくつか報告があるも小児に特異的な診断基準は確立していない。QT時間と重症度についても関連しないとの報告もあり、SQTSの予後予測因子、学校心臓健診におけるQT短縮の抽出基準についても一定の見解は得られていない。唯一の予後不良因子は心停止の既往であり、そのようなSQTS患者は若年者であってもICD埋め込みが強く推奨される。本症例においてもWCDを橋渡しとしたICD埋め込みを予定した。【結論】本邦におけるSQTSの取り扱いについて、小児に対するWCDの使用状況も含め、文献的考察を踏まえて報告する。