The 52st Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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ポスターセッション

成人先天性心疾患2

ポスターセッション(P50)
成人先天性心疾患2

Wed. Jul 6, 2016 6:00 PM - 7:00 PM ポスター会場 (天空 ノース)

座長:
小出 昌秋(聖隷浜松病院 心臓血管外科)

P50-01~P50-05

6:00 PM - 7:00 PM

[P50-02] 蛋白漏出性胃腸症における循環動態の特徴:新しい知見

栗嶋 クララ, 桑田 聖子, 簗 明子, 岩本 洋一, 石戸 博隆, 増谷 聡, 先崎 秀明 (埼玉医科大学総合医療センター 小児循環器部門)

Keywords:Fontan手術、蛋白漏出性胃腸症、静脈特性

【背景】蛋白漏出性胃腸症 (PLE)は,Fontan患者における重大な合併症の一つである.高い中心静脈圧(CVP)がその原因の一つと考えられているが,同等のCVPでもPLEを発症しない患者は多数存在する.従って,PLEの病態と密接に関連する,より特異度の高い指標が求められる.
【目的】静脈のうっ滞は血液量と静脈還流特性によってより詳細に評価できるため,これらの指標はPLE病態に特異度の高い情報を提供するという仮説を検証した.
【方法】Fontan術後評価の心臓カテーテル検査を施行した22例(うち4例PLE)において,インドシアニングリーン(ICG)を用いた色素希釈法により,循環血液量(BV)、心拍出量(CI)を,Valsalva法によって平均循環充満圧(mCP)を計測した.更に,CI/BVにより平均循環時間(CT),ICGが最初に検出するまでの時間TaをCTで除した値から,肺循環時間が循環時間に占める割合を算出した.またCVP,mCP,CIから静脈還流抵抗(Rvr)を算出した.各々の指標について,PLE群とそれ以外の対照群で比較した.
【結果】PLE群と対照群のCVPは,15.0±3mmHg vs. 12.1±2mmHgでPLE群が高値の傾向を示した.同様に,BV,mCP,CT,Ta/CT,RvrはPLE群と対照群で各々123ml/kg vs. 78ml/kg (p<0.05), 42mmHg vs. 31mmHg (p<0.05), 78s vs. 58s (NS), 9.2% vs. 29.0% (p<0.05),107RUm2 vs. 7RUm2 (p=0.05)と, 循環血液量増大,静脈駆動圧の増大,静脈還流抵抗の増大という静脈循環がPLE発症に深く関与している可能性が示唆された.更にTa/CTの低下から,肺血管キャパシタンスの低下もPLE発症に関わっている可能性も示唆した.
【結語】静脈うっ滞を意味する複数の静脈血行動態指標とPLEの関連を示した今回の結果は,CVPの他にこれらの指標を評価に加えることにより,高い確率でPLE発症リスクの層別化が可能であることを強く示唆する.多数例での検証が待たれる.