第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

BTシャント、その他

ポスターセッション-外科治療08(P77)
BTシャント、その他

2016年7月7日(木) 18:00 〜 19:00 ポスター会場 (天空 ノース)

座長:
平松 祐司(筑波大学 心臓血管外科)

P77-01~P77-06

18:00 〜 19:00

[P77-04] シャント術で成長させた奇静脈を用いて右肺動脈再建術を施行した右肺動脈欠損症の1例

大西 達也1, 福留 啓佑1, 奥 貴幸1, 宮城 雄一1, 寺田 一也1, 太田 明1, 川人 智久2, 江川 善康2 (1.四国こどもとおとなの医療センター 小児循環器内科, 2.四国こどもとおとなの医療センター 小児心臓血管外科)

キーワード:右肺動脈欠損症、右肺動脈再建術、奇静脈

【背景】片側肺動脈欠損症は複雑心奇形にはしばしば合併するが、孤立性片側肺動脈欠損症の発生頻度は20万人に1人と非常に稀で、右肺動脈欠損症が左肺動脈欠損症よりやや多い傾向にある。右肺動脈末梢血管へは鎖骨下動脈や気管支動脈などからの側副血管が流入するが、血流が少なく右肺動脈末梢血管は全体的に低形成となる。また、片肺血流に起因する健側肺の肺高血圧症合併は予後不良因子であり、外科的加療が考慮されうる疾患である。今回、奇静脈を用いた右鎖骨下動脈-右肺動脈シャント術を施行後、成長した奇静脈を用いて右肺動脈再建術を行った右肺動脈欠損症の1例を経験した。
【症例】2歳の女児。反復する気管支炎と胸部レントゲンでの右肺低形成を契機に、造影CTと心エコー検査で診断された。心臓カテーテル検査では、右肺末梢への血流は腕頭動脈と右下横隔膜動脈からの側副血管でわずかにsupplyされていた。左肺動脈平均圧は19mmHgで、今後肺高血圧症が進行するおそれがあったため、心内修復術を前提として奇静脈を用いた右Blalock-Tausig shunt術を施行した。術後8ヶ月の時点で心臓カテーテル検査を施行し、shunt術に用いた奇静脈と右肺動脈末梢血管の成長を確認できたため、奇静脈を用いた右肺動脈再建術を施行した。再建した右肺動脈に狭窄は認めておらず、Autograftであり今後の成長が十分期待できる。
【考察】本症では外科的介入の時期が難しいが、肺高血圧の合併は予後不良であり、また早期のrevascularizationは肺血管床の成長に有利に働くため、本症例では可及的に外科治療を施行した。結果的に右肺動脈末梢血管は著しく成長した上で右肺動脈再建術に移行できた。人工血管や心膜ロールによる再建術の報告はあるが、Autograftである奇静脈をshunt術に用いた上で、右肺動脈再建術を施行した報告はない。将来的にも再手術の可能性は低く、極めて有効な手段であると考えられた。