第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

要望演題

集中治療と周術期管理

要望演題1(YB01)
集中治療と周術期管理

2016年7月6日(水) 15:40 〜 16:40 第E会場 (シンシア ノース)

座長:
根本 慎太郎(大阪医科大学外科学講座 胸部外科学教室)
上田 秀明(神奈川県立こども医療センター 循環器科)

YB01-01~YB01-06

15:40 〜 16:40

[YB01-05] 小児心臓外科周術期管理におけるトルバプタン導入

片山 雄三1, 小澤 司1, 塩野 則次1, 渡邉 善則1, 直井 和之2, 池原 聡2, 高月 晋一2, 中山 智孝2, 松裏 裕行2, 佐地 勉2, 与田 仁3 (1.東邦大学医療センター大森病院 心臓血管外科, 2.東邦大学医療センター大森病院 小児循環器科, 3.東邦大学医療センター大森病院 新生児科)

キーワード:tolvaptan、perioperative management、diuretic

【背景】開心術後の血行動態は、手術・麻酔・人工心肺の侵襲により炎症反応・血管透過性が惹起され、特殊な体液分布を示す。そのため血管内脱水を原因とする血行動態不安定な状態をきたし易く、繊細な体液管理を要する。心不全における体液貯留改善を適応として2010年12月に承認されたトルバプタンは、小児循環器領域においても使用報告が増え、また成人開心術後の体液管理においてもその安全性や有用性についての報告が散見される。そこで我々は、2014年6月から小児心臓外科周術期管理にトルバプタンを導入した。

【目的】小児心臓外科周術期におけるトルバプタンの安全性や有用性を検討すること。

【対象・方法】2013年8月~2016年1月に当院で施行した小児心臓外科初回待機手術のうち、1)体重5kg以上)、2)血行動態の安定している左右シャント疾患(ASD、VSD、pAVSD、PAPVC)、3)人工心肺使用下心内根治術、の条件を満たす38例を後方視的に検討した。トルバプタン導入前(N群、n=18)と導入後(T群、n=20)に分け、入室~翌朝までのICUデータを比較検討した。全ての症例で、抜管後胃管から既存経口利尿剤を規定量使用し、T群ではトルバプタン(0.45mg/kg)を追加した。ともに必要時には、静注利尿剤の追加投与を行った。

【結果】体重・手術時間・人工心肺時間等の患者背景に差は認めなかった。翌朝までの体重当たりの尿量、CVPの減少度、BUNの上昇度、翌朝における血清BUN・Cr・Na値、尿比重において両群間で有意差は認めなかったが、追加静注利尿剤の使用量はT群で有意に少なかった(3.6±2.9 vs 7.6±5.8 mg, p=0.004)。両群とも、血清Na値は全て150mEq/L未満で推移していた。

【考察・結語】トルバプタン導入により、同等な体液管理を維持したまま、追加利尿剤投与量を削減することが可能であった。小児心臓外科周術期管理において、トルバプタンは有用な選択肢となりうることが示唆された。