第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

要望演題

画像診断の進歩

要望演題2(YB02)
画像診断の進歩

2016年7月6日(水) 16:10 〜 17:10 第D会場 (オーロラ イースト)

座長:
早渕 康信(徳島大学大学院医療薬学研究部 小児科学)
片山 博視(大阪医科大学附属病院 小児科)

YB02-01~YB02-06

16:10 〜 17:10

[YB02-05] 放射光を用いた位相差X線CTによるwhole heart標本におけるヒト心臓刺激伝導系の可視化

篠原 玄1, 森田 紀代造1, 黄 義浩1, 橋本 和弘1, 金子 幸裕2, 森下 寛之2, 大嶋 義博3, 松久 弘典3, 岩城 隆馬3, 高橋 昌4 (1.東京慈恵会医科大学 心臓外科学講座, 2.国立成育医療研究センター 心臓血管外科, 3.兵庫県立こども病院 心臓血管外科, 4.新潟大学大学院医歯学総合研究科 呼吸循環外科学分野)

キーワード:phase contrast imaging、synchrotron、cardiac conduction system

【背景】1906年田原の房室結節発見以来連続切片により刺激伝導系の存在が明らかとなった。放射光を光源とする位相差CTは密度分解能により吸収イメージングの約1000倍の感度を有し、従来のX線吸収CTでは低コントラストの軟組織に対しても密度差に由来する構造解析に有用である。正常whole heart標本を対象に大型放射光施設SPring8における位相差CTを用いた心臓刺激伝導系の非破壊的3次元的可視化の可能性とその循環器小児科・心臓外科臨床における有用性を明らかにした。
【方法】正常剖検心4例(日齢0~152日)を対象にSPring8の医用ビームラインBL20B2においてタルボ干渉計による位相差CTを構築し生食浸透にて撮影した。画像データ(10-20μm/ピクセル)解析にImage J、Amira Jを用いた。撮影後中隔の亜連続切片(20μm毎)標本を作成しCT画像と対比した。
【結果】位相差CT画像において全例で房室接合部から心室中隔頂上部にAschoffらの刺激伝導系の病理組織学的定義と合致する、周囲通常心筋とhigh density sheathにより隔絶された連続する(traceable) low density areaが描出され、連続切片における組織学的検討から房室結節、貫通束、分枝束、左右脚と確認された。また心全体に投影される刺激伝導系の3D再構築像においては自由な角度から精細な局所解剖を把握可能であり心内立体構築との関係性や各疾患の術式における刺激伝導路局在の意義を明確に認識する有用な情報を得た。
【結論】位相差CTはこれまで連続切片でしか同定され得なかったヒト刺激伝導系の可視化、形態解析に理想的なツールである。3Dの心臓への鮮明な刺激伝導系再構築像は未だ刺激伝導系走行が解明されていない多くの先天性心疾患に対する手術を含めた治療アプローチに強い示唆をもたらすものと期待される。