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[II-OR36-04] WPW症候群における学校心臓健診の意義と問題点
Keywords:WPW症候群, 学校心臓検診, 突然死
背景:学校心臓健診は国内の全児童、生徒に問診および心電図を施行し、WPW症候群のより正確な検出に役立ってきた。しかし精密医療機関でのリスク例の抽出および管理のための確立されたアルゴリズムはこれまでなかった。目的:WPW症候群における学校心臓健診の意義と問題点を明らかにする。対象と方法:2007年から2015年に福岡県で高校1年時に学校心臓健診を受診した382,042人の生徒を対象とした。1次健診では問診や12誘導または4誘導(I,aVF,V1,V6)心電図を行った。WPW症候群が疑われた生徒は精密医療機関で詳細な検査を行い確定診断と突然死のリスクの有無を判断した。副伝導路の局在部位は、1次健診心電図からArrudaアルゴリズムにより推定した。結果:382,042人中620人(0.12%)がWPW症候群を疑われた。620人中374人が4誘導心電図、残り246人が12誘導心電図を受けた。487人が精密医療機関で詳細な検査(運動負荷心電図、ホルター心電図、経胸壁心臓超音波検査等)が行われた。最終的に435人の生徒をWPW症候群と診断した。4誘導(284/487例)と12誘導心電図(203/487例)に診断率で有意差はなかった(253/284=89% vs 181/203=89%)。48例が症候性で(11%)、主な症状は動悸が38例(79%)、胸痛が4例(8%)であった。また動悸および失神が1例であった。推定された副伝導路の局在部位は、左側108例、右側130例、中隔168例、不明28例であった。不明例の割合は4誘導と12誘導で有意差はなかった。精密検査を行った487例中208例が運動負荷心電図を受けた。10例はデルタ波が消失しなかったが、全例電気生理学的検査は施行されなかった。動悸および失神を示した1例を含む7例に電気生理学的検査およびアブレーションが施行された。突然死例はなかった。結論:学校心臓健診によりWPW症候群のより正確な頻度の検出とリスク例の抽出が可能であった。一方で精密医療機関におけるリスク層別化のためのアルゴリズムの構築が今後の課題である。