第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター

術後遠隔期・合併症・発達

ポスター (III-P38)
術後遠隔期・合併症・発達 3

2017年7月9日(日) 13:00 〜 14:00 ポスターエリア (1F 展示イベントホール)

座長:佐川 浩一(福岡市立こども病院 循環器科)

13:00 〜 14:00

[III-P38-03] 非チアノーゼ性先天性心疾患に合併した脳膿瘍の2例

渡辺 健一, 堀口 祥, 田中 篤 (長岡赤十字病院 小児科)

キーワード:脳膿瘍, 非チアノーゼ性心疾患, 先天性心疾患

【背景】脳膿瘍は死亡率および後遺症率が高く重篤な疾患である。脳膿瘍の危険因子として右左短絡を伴うチアノーゼ性先天性心疾患が重要であるが、非チアノーゼ性先天性心疾患に合併した脳膿瘍の報告は稀である。【症例1】9歳、女児。ダウン症候群、完全型房室中隔欠損(心室中隔欠損自然閉鎖)にて外来経過観察中であった。心エコーでは一次孔欠損は小欠損で左右短絡を認めるのみで、SpO2 98~100%であった。入院の9日前から37~38℃台の発熱、頭痛、嘔吐が出現した。何度か医療機関を受診したが、急性胃腸炎、急性上気道炎等を疑われ経過観察とされたが症状改善なく当院を受診した。頭部CT、MRIにて脳膿瘍を疑い開頭ドレナージを行い、穿刺液からStreptococcus milleri groupが同定された。ABPCにて計8週間の治療を行い神経学的後遺症なく退院した。コントラストエコーではわずかながら右左短絡の存在が確認された。【症例2】8歳、女児。肺動脈閉鎖、フォンタン術後にて外来経過観察中。SpO2 95~96%であった。雪上で遊んでいて用水路に落ち心肺蘇生され当院に搬送された。溺水の診断にて呼吸器管理が行われ11病日に抜管した。14病日突然意識障害、けいれんを認め、頭部MRIにて多発性の脳膿瘍と診断した。開頭ドレナージは施行せず、血液培養からも菌は検出されず起因菌は不明であった。MEPMおよびVCMによる4ヵ月以上の長期抗菌薬治療を要したが、明らかな神経学的後遺症なく退院した。フォンタン術後のVV shunt等による右左短絡が原因として考えられた。【考察】非チアノーゼ性先天性心疾患とされる症例においても、わずかに存在する右左短絡が脳膿瘍の原因となりうると考えられた。これらの疾患において原因不明の発熱、頭痛、神経症状等を認めた場合は脳膿瘍を鑑別の一つに挙げる必要がある。