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[III-P40-04] 経口肺血管拡張剤の積極的な導入で良好な経過を呈しているBMPR2遺伝子変異を有する遺伝性肺動脈性肺高血圧の一例
Keywords:肺高血圧, BMPR2, 予後
肺動脈性肺高血圧症(PAH)の機序はいまだ不明な点が多いが、遺伝性PAHの原因遺伝子としてBMPR2、ACVRL1、ENG遺伝子変異などが知られている。これまでBMPR2遺伝子変異を有するものは有さないものと比較し診断時の肺血管抵抗が高く、心係数が低いなど血行動態がより重症とされ、肺移植・死亡イベントが優位に高い予後不良な群とメタ解析において報告されている。今回我々は各種肺血管拡張剤を積極的に追加導入し、発症後10年以上経過しているが、肺高血圧の増悪なく経過している症例を報告する。症例は16歳女児。数世代にわたる血族結婚があり、叔父・祖母に突然死の家族歴を有し、母もPAHを発症し、本児と同様にBMPR2遺伝子異常を指摘されている。本児が2歳頃より易疲労性を認め、3歳時に運動時の意識消失発作を起こし当科受診し、肺高血圧症と診断した。心臓カテーテル検査で肺動脈圧(PAP)53/26(38)mmHg、体動脈圧肺動脈圧比(Pp/Ps)0.54、肺血管抵抗(Rp)9.1 Woodと肺動脈圧の上昇を認めたが、4歳(2004年)よりシルディナフィルを導入し、1年後PAP 59/31(44)、Pp/Ps 0.59、Rp 9.1、2年後 PAP 55/28(42)、Pp/Ps 0.57、Rp 9.7と進行なく経過していた。11歳(2011-12年)よりタダラフィル、アンブリセンタンを導入し、PAP 45/17(28)mmHg、Pp/Ps 0.51(0.39)、Rp 4.2と改善を認め、2017年現在タダラフィル、マシテンタン、プロサイリンを継続し、運動制限を要するが日常生活を不自由なく送れている。近年、本邦より単施設ではあるが積極的な肺血管拡張剤による治療介入によりBMPR2遺伝子変異の有無の影響を受けなかったと報告もあり、本症例もAdd-onにより肺高血圧の改善を確認できた興味深い経過であったため報告する。