[II-MOR07-02] 大型動物の下大静脈絞扼モデルを用いた腹部臓器うっ血による臓器障害評価
Keywords:Fontan, animal model, IVC banding
【目的】フォンタン術後の腹部臓器うっ血を再現し、新規治療法を検討するための大動物モデルを作る。【方法】Yorkshire pig (20~23kg)に対して、下大静脈圧が12mmHgになるよう下大静脈絞扼術を施行した(IB群、n=5)。術後2ヶ月目に腹部MRI撮像、採血、各臓器(心臓、肺、肝臓、脾臓、腎臓、小腸)の組織染色、さらにタンパク・mRNA発現をsham群(n=5)と比較した。【結果】IB群では術直後に心拍数が上昇(pre: 76.2±4.5 bpm vs. post: 89.8±4.9 bpm, P<0.01)、収縮期・拡張期血圧(pre: 84.2±3.8 mmHg vs. post: 76.0±4.9 mmHg in systole, P<0.01, pre: 59.9±2.6 mmHg vs. 54.1±3.7 mmHg in diastole, P<0.01) および左室拡張末期容量(pre: 65.4±3.6 ml vs. post: 51.1±4.2 ml, P<0.01)が減少した。また、2か月後にIB群ではMRIにより著明な腹水貯留が見られ、sham群に比べ、血中総タンパク・アルブミン、総コレステロール、AST、LDH、4型コラーゲンがいずれも有意に減少していた。組織染色では、肝臓において小葉および類洞の拡張・線維化が著明であったが、他の臓器ではうっ血や線維化を示唆する所見は乏しかった。さらに、肝組織のタンパク解析において、IB群はsham群に比べα-SMAの増加、mRNA解析では1型・3型コラーゲン、MMP9・TIMP1の著明な上昇が見られた。また、脾臓ではMMP9、CD45タンパクの発現上昇が見られ、小腸でもMMP9の軽度上昇が見られた。一方、心臓、肺、腎では明らかな炎症系タンパク・mRNAの発現上昇は認めなかった。【結論】下大静脈絞扼術により、肝臓においてはα-SMAやコラーゲン上昇を伴う機能障害、さらに、脾臓や小腸にも炎症が波及している点など、フォンタン遠隔期の所見に類似しており、新規治療法を試みるモデルとしての有用性が示唆された。