[II-MOR07-03] 新しい心機能指標(Ees’)と後負荷指標(Ea’)を用いた左心室血管カップリングの評価
Keywords:心機能, 後負荷, カップリング
【背景】前負荷一回動員仕事量(Msw)は、収縮末期エラスタンス(Ees)より負荷依存性が低く再現性も高い心収縮力の指標だが、対応する後負荷の指標がないために心室血管カップリングの評価につながらず臨床応用が限られていた。我々は、Mswに由来するEes’という新たな心機能指標とこれを用いた心室血管カップリング(Ees’/Ea’)の概念を考案し、従来のEes/Eaを用いたカップリングの評価と比べどのような利点があるかについて検討を行った。【方法】14匹の成犬にセンサーを埋め込み、左心室圧距離関係の計測を行った。様々な負荷状態で下大静脈閉塞を行いEes、Mswを求めた。我々の考案した理論式より、Ees’はMsw/stroke dimension(SD)、Ea‘はstroke work/SD2 と定義した。介入前後の指標の比較は対応のあるt検定、用量反応関係はベースラインで補正後スピアマンの順位相関係数で評価した。【結果】全体では、Ees’/Ea’(0.26-0.98)はEes/Ea(0.12-2.37)と強い相関を認めた(r=0.80, p<0.001)。5匹で行ったPacingではEesの増加(7.8±4.1 vs 12.9±3.3 mmHg/mm, p=0.05)およびEes’の増加(11.0±3.5 vs 14.1±3.8 mmHg/mm, p=0.04)を認めたが、Ees/Ea、Ees’/Ea’の変化は認めなかった。Pacing下でDOBを2.5-5-7.5-10γと増量すると、Ees’/Ea‘は5γの時点で有意な増加を認めたのに対し、Ees/Eaは10γで有意差を認めた。またEes’/Ea‘はDOB用量と有意な相関を認めた(rs=0.68, p<0.001)が、Ees/Eaでは認めなかった。5匹の頻拍誘発性心不全モデルではベースラインに比べEes/Ea(0.61±0.23 vs 0.30±0.14, p<0.01)、Ees’/Ea’(0.65±0.06 vs 0.40±0.10, p<0.001)の低下を認めた。【結論】Ees’/Ea’はEes/Eaに比べ変動範囲は狭いが、Ees/Eaに比べて心室血管カップリングの変化を鋭敏に検出できた。Ees’はエラスタンスとしての利点とMswに由来する正確性を併せ持つ有用な指標と考えられた。