[II-MOR08-03] 動脈管ステント留置中生じた腎動脈損傷に対し、放射線科と連携しコイル塞栓でレスキューした大動脈縮窄複合の新生児例
Keywords:腎動脈, コイル塞栓, カテーテル治療
【はじめに】カテーテルインターベンション中に生じ得る合併症を想定し、他科のバックアップ体制を備えておくことは重要である。今回我々は動脈管ステント留置術の際生じた腎動脈損傷に対し、放射線科と連携してコイル塞栓を施行し良好な経過を得たため報告する。【症例】日齢10の女児。在胎40週、3236gで出生。日齢5に大動脈縮窄複合のため新生児搬送された。動脈管狭小化を認め血行動態が不安定であったため、同日両側肺動脈絞扼術を施行した。動脈管はプロスタグランジン使用下に開存が不十分であり、日齢10にステント留置術を施行した。ガイドワイヤーを逆行性に動脈管を通過させ下行大動脈に留置し、ステントを留置した。ステント留置後大量の血尿を認めたため腎動脈造影を施行したところ、右腎動脈から造影剤漏出を認めた。ワイヤーによる腎動脈損傷と判断し、直ちに放射線科と共同で腎動脈塞栓を施行した。ゼラチンスポンジで右腎動脈分枝を塞栓し良好に止血を得たのち、膀胱洗浄にて新規の出血がないことを確認した。帰室中、再度血尿を認めたため確認造影を施行したが、明らかな造影剤漏出は認めなかった。自然止血された可能性を考えたが、万全を期し責任血管をコイル塞栓した。その後再出血は認めなかった。【まとめ】本症例はガイドワイヤーを下行大動脈に留置した際に腎動脈を損傷したものと考えられた。ゼラチンスポンジによる止血は良好であったが、同部位からの再出血が自然止血された可能性を考慮し、コイル塞栓を追加した。治療後の経過は良好であった。小児循環器医は概して腎血管に対するインターベンションに不慣れである。本症例は腎動脈損傷が判明してから速やかに放射線科医と共同で治療に移行できたため救命できた。カテーテル治療を行う体制について再考させられる症例であった。