[II-YB05-02] 右心室圧波形を用いた右室拡張能評価の有用性 - 肺高血圧症例における Elastic recoil/stiffness, relaxation 評価 -
Keywords:肺高血圧, 右室拡張能, 減衰振動
【背景】右室拡張能評価は重要であるが、左室に比較して評価が難しく一般的ではない。また、心エコー検査での右室流入血流による評価にも限界がある。心室弛緩能評価は時定数(Exponential, τE およびLogistic, τL)がGold standardと認識されている。しかし、右室拡張期圧降下は緩やかで圧が低値となってからdP/dtの最小値を呈するため、τE, τLは右室弛緩能評価の指標として適切ではない。さらに、τE, Lは実測した左室圧に対する近似値であり、右室心筋の生理学的機能評価に則した指標ではない点も問題である。我々は右室圧を心室壁の伸縮によるElastic recoil/stiffnessと筋原繊維のCross-bridgingによる力とのバランスで形成されていると見なし、等容性拡張期の右室圧 P(t)を減衰振動の運動方程式 d2 P/dt2 + 1/μ dP/dt + Ek (P - P∞) = 0 (1/μ:減衰係数; Ek:ばね定数)に適用した。EkはElastic recoil/stiffness, 1/μはCross-bridging deactivation によるrelaxationを示す。【目的】減衰振動の運動方程式から算出されるEk (s-2), μ(ms)が右室弛緩能評価の有用な指標であるかを検討する。【方法】右室圧容量負荷を認めない20例(control群)と肺高血圧症8例(PH群)を対象とした。Levenberg-Marquardt法を用いて右室拡張期圧波形を上記方程式にfittingさせ、Ek, μを計測した。【結果】Control群とPH群ではτEおよびτLには有意差を認めなかった。Control群の右室弛緩能は、Ek = 487.0±99.6s-2, μ = 41.1±10.4msであった。PH群ではEkが有意に高値(945.9±84.2s-2, p<0.0001) 、μは有意に低値(16.5±4.3ms, p<0.0001)であり、右室のElastic recoil/stiffnessの増加、cross-bridge deactivationの低下が示された。【結語】減衰振動を適用した解析は病態を反映し、肺高血圧症における右室弛緩能の評価に有用であった。時定数(τE, L)では評価できない右室弛緩能も指摘できる方法であることが示された。