[P02-04] RASA1遺伝子の新規遺伝子変異が見いだされた肺動静脈瘻を伴う遺伝性毛細血管拡張症の一例
キーワード:肺動静脈瘻, 遺伝性出血性毛細血管拡張症, RASA1遺伝子
背景:遺伝性毛細血管拡張症(以下HHT)は、血管奇形症候群の一つで有り、皮膚、粘膜の毛細血管拡張と鼻出血、肺や脳の動静脈奇形の合併を特徴とする。原因として、ENG, ALK-1, SMAD4の3つの遺伝子の変異が同定されている。今回我々は、HHTの症状を伴いRASA1遺伝子の新規遺伝子変異が見いだされた症例を経験した。症例:7歳女児。出生時から皮膚、両側眼球結膜の毛細血管拡張を認めていた。近医で偶然にチアノーゼとばち指を指摘され、紹介先ではSpO2は75%であり、胸部CTにて肺動静脈瘻(以下PAVF)と診断された。当院での心カテにて、PAVFは右下肺野に広範囲に広がっていたため、経皮的塞栓術は不適と考え胸腔鏡下右肺下葉切除術を施行した。術後のSpO2は98%に上昇した。その後鼻出血を繰り返し、HHTと臨床診断した。本人と家族に施行した遺伝子検査では本人にのみRASA1遺伝子の新規のフレームシフト変異が同定され、de novoと考えられた。コンピューターによる障害性予測では障害性が強く示唆された。考察:RASA1遺伝子は、血管奇形症候群の中でもcapillary malformation-arteriovenous malformation(CM-AVM)の原因遺伝子として既知である。CM-AVMは皮膚の毛細血管奇形と頭蓋・脊髄の動静脈奇形の合併を特徴とし、HHTとは異なり、粘膜病変は稀で、肺や肝臓には病変を来さない。興味深いことに本症例ではHHTと同様に肺と粘膜病変も伴っていた。近年、HHTの原因遺伝子として新たにRASA1が報告され、本症例においてもRASA1遺伝子変異によりHHTが発症したと考えられた。結語:RASA1遺伝子といったRAS-MAPK系の遺伝子変異もENG, ALK-1, SMAD4といったHHT原因遺伝子に加えて候補遺伝子として念頭に置く必要があると思われた。