[P06-03] 胎児期に心臓腫瘍を指摘されたダウン症候群の1例
キーワード:ダウン症候群, 心臓腫瘍, 線維腫
【はじめに】 ダウン症候群(DS)は固形腫瘍の発生率が低いことで知られている.【背景】心臓腫瘍を合併したDSの報告は極めて少ない.今回,胎児期に心臓腫瘍を指摘されたDSの新生児例を経験したので報告する.【症例】日齢0,男児.妊娠36週3日陣痛発来し,胎児心エコー検査で左室自由壁側に24x19mmの高輝度腫瘤性病変,少量の心嚢液貯留,心拡大(心胸郭断面積比40%)等を初めて認められ,当院に母体搬送された.児は在胎36週4日,体重2896g,吸引分娩で仮死なく出生した.心エコー検査四腔断面像で左室後壁に20x13mmの腫瘤を確認,心収縮良好,流出路障害等は認めなかった.顔貌より染色体異常が疑われ後日に21trisomyを確認した.生後は心不全症状なく哺乳良好で経過した.CT, MRI検査では非特異的な所見しか得られず組織性状の断定は困難であった,日齢44に診断の確定,治療方針を検討するため生検施行した.術中所見では心臓左室後面に2×3cm大、表面平滑で淡黄色、弾性硬、血管成分に乏しい腫瘤であった.病理組織学的には,正常心筋に混在して核異型に乏しい紡錘形細胞が錯綜して認められ,腫瘍成分は主として膠原線維,筋線維芽細胞の増生からなり,筋系マーカーが陰性であること等から横紋筋腫ではなく,左室後面に発生した線維腫と診断した.悪性腫瘍は否定された.生検後も循環動態は保たれ不整脈等なく経過し退院した.【考察】DSに合併した心臓腫瘍の報告は極めて稀である.自験例では症状に乏しかったが各種画像検査にて腫瘍の確定診断が得られず治療方針を検討するために必要と判断し生検施行した.【結語】胎児期に心臓腫瘍を指摘されたDSの1例を経験した.今後積極的治療は行わず,不整脈,血流障害,弁機能障害等に留意しながら定期検診の方針である.