[P25-03] 重度の総動脈幹弁閉鎖不全を合併した総動脈幹症の臨床像
Keywords:総動脈幹症, 大動脈弁形成, 総動脈幹弁閉鎖不全
【背景】重度の総動脈幹弁閉鎖不全(TrR)を合併した総動脈幹症は予後不良とされている。欧米ではヒト同種人工弁(aortic homograft)を用いた弁置換術が新生児期に行われることがあるが、本邦では少数の症例報告はあるものの現実的な選択肢ではなく治療に難渋することが多い。【目的】当院で経験した重度TrRを合併した総動脈幹症の臨床像を明らかにすること。【方法】1985-2017年に福岡市立こども病院で初回手術を受けた総動脈幹症連続58例を対象とし,2000年を境に前期21例,後期37例に分けた。さらに全体を初回手術前の心エコーで評価したTrRが軽度までの44例(A群)、中等度6例(B群)、重度8例(C群)の3群に分類し1.患者背景、2.初回姑息術の割合、3. 予後について診療録から後方視的に検討した。【結果】総動脈幹弁はいずれの群も3ないし4弁でA, B群は多くは弁の中央から逆流しており機能的な要素が大きい一方、C群は弁の異形成が高度で器質的な閉鎖不全であった。初回姑息術の割合はA群 前期 1/17, 後期15/27,B群 前期 1/2, 後期4/4,C群前期1/2, 後期6/6例とA群に比しB, C群で,前期に比し後期で有意に多かった。死亡はA群 前期 3/17, 後期0/27、B群 前期0/2, 後期0/4、C群 前期2/2, 後期3/6例でうち早期死亡はA群2例,C群3例だった。【考察】機能的閉鎖不全に対しては肺動脈絞扼術(PAB)により逆流の程度が減少することが多く二期的根治を行うことが有効な戦略と考えられた。一方器質的閉鎖不全の場合PABは有効ではなく、乳児期早期までに弁形成術を行った場合も多くは逆流の制御は困難で術後心不全から脱することは難しい。現在当院ではPAB後、乳児期後期(目標体重5kg, 弁輪径18mm)まで密に抗心不全療法を行いながら待機するようにしている。【結語】重度TrRを合併した総動脈幹症は依然予後不良の疾患群である。治療には詳細な弁構造の把握と密な抗心不全療法が求められる。