[I-OR06-03] 正弦曲線のあてはめを用いた右心室前負荷動員一回仕事量の推定精度の検証~より簡便な単一心拍法の開発
Keywords:肺高血圧, 前負荷動員一回仕事量, 右室血管カップリング
【背景】肺高血圧症の患者において、心収縮力と後負荷のカップリングは右室の後負荷に対するadaptationを反映し、予後に関連する指標として注目されている。我々は単一心拍から負荷依存性の低い心収縮の指標である前負荷動員一回仕事量(PRSW)を推定する方法を報告したが、右心室圧容積の同時計測が必要であるため、臨床応用が限られていた。今回、圧データのみを用いて、PRSWを推定する新たな方法を考案したので、その予測精度を検討した。【方法】右心カテを施行した31人の患者において右室の圧容積同時計測を行った。バルサルバ法で負荷を変化させながら、実測PRSWを求めた。右心室圧曲線に正弦曲線のあてはめを行って等容心拍の最高到達圧(Pmax)を推定した。PRSW 関係の直線性から導き出されたPmax=PRSW+右室収縮期駆出圧(Pm)+右室拡張末期圧(Ped)という式を用いてPRSWを推定した。【結果】患者は61±12歳で、IPAH6名、SSc-PAH13名、HFpEFまたは呼吸器疾患に伴うPHが4名、PHなしが8名であった。右室収縮期圧は50±22mmHg、実測PRSWの範囲は14-64mmHgであった。推定Pmaxと実測PRSW+Pm+Pedはr=0.95 (p<0.0001)と強い相関を示した。平均肺動脈(MAP)とPm+Pedがr=0.96 (p<0.0001)と強い相関を認めたためPm+PedをMAPで近似すると、推定PRSW(=Pmax-MAP)と実測PRSWはr=0.83 (p<0.0001)と強い相関を認め、誤差の標準偏差は6.7mmHgであった。これに基づいた右室血管カップリングを計算すると推定値と実測値の相関は0.50(p=0.005)であった。【結論】 圧データのみによるPRSWの推定値は、我々が以前に報告した圧容積の同時計測を用いた推定法(r=0.91、誤差の標準偏差5mmHg)に比べると精度が劣るが、実測値と強い相関を示した。圧容積の同時計測が出来ない状況における代替手段としての意義はあるが、心室血管カップリングの推定精度については課題があると考えられた。