[III-OR36-03] AV delayの短縮により心不全の改善を認めた三尖弁置換術後修正大血管転位の2症例
Keywords:修正大血管転移, ペースメーカー, 心不全
【はじめに】修正大血管転位(cc-TGA)では体心室右室のためしばしば難治性心不全を呈する。三尖弁置換術(TVR)とペースメーカー植込みという同様の治療経過をたどり慢性心不全状態であった年代の異なるcc-TGAの2症例に対してDDDのAV delay調整を行い有効であったため報告する。【症例1】9歳男児:cc-TGA {S.L.L} 先天性完全房室ブロック。胎児期より高度徐脈と心拡大があり出生直後よりVVIペーシングを開始。9歳時にTVRとDDDへの変更を行った。しかし術後より顔色不良、頭痛、嘔気など低心拍出量症候により入退院を繰り返し各種薬物治療にても改善がないためAV delayの調整を行った。石川らの方法を元にパルスドプラとMモードエコーで計測した心房収縮終末点から三尖弁閉鎖点までの間隔を既設定AV delayから除したものを至適AV delayとした。こうして得られた至適AV delay 47msecを元にAV delayを150msecから60msecまで短縮した。これによりTEI indexは0.50から0.26、右室短縮率は9.1%から17%と改善した。心不全症状は劇的に改善し登校も可能になった。【症例2】27歳男性:cc-TGA{S.L.L} 治療経過:20歳時にTVR施行。術後完全房室ブロックとなりDDDペーシングも開始された。右室収縮能低下のためしばしば自宅安静や入院加療を要した。27歳時にAV delay調整を行った。至適AV delay 37msecを元にAV delayを50msecまで短縮した。本症では心肺運動負荷試験ではpeak VO2が8.3ml/kg/minであったのが13.0ml/kg/minにまで改善した。【まとめ】2症例ともにAV delayの短縮は有効であった。特に年少の症例1では心不全症状は劇的に改善した。同様の背景を持つ心不全症例には検討すべき治療と考えられた。