[III-P81-03] 睡眠中の補充心室ペーシングにより心室細動が誘発された先天性QT延長症候群1型の1例
Keywords:先天性QT延長症候群, 心室細動, 心室ペーシング
【はじめに】先天性QT延長症候群1型での心イベントは運動時に誘発されることが多く(約60%)、安静時睡眠中は3%と少ない。今回、睡眠中に補充心室ペーシングが心室細動(VF)を誘発させたと考えられる症例を報告する。【症例】先天性QT延長症候群1型とLoeys-Dietz症候群を合併している 18歳男性。心停止の既往があり、βブロッカー内服で経過観察していたが、14歳時に心室頻拍(VT)を認めたため、ICD植え込みを実施した(抗徐泊ペーシングをDDI; lower rate 40ppmに設定)。Loeys-Dietz症候群に関して、大動脈基部拡張の進行のため、16歳時にDavid術を実施した。その後中等度のAR, MRは残存していたが症状は安定していた。18歳時、睡眠中にVFが発生しICDが作動し洞調律に復帰した。ホルター心電図は明らかな異常は指摘されずβブロッカー増量で対応したが、その1か月と2か月後にも夜間睡眠中にVFが発生しICDが作動した。本人は就寝中でICD作動に気づいていなかったが遠隔モニタリングで確認された。ICDに記録されている心内電位波形を確認すると、睡眠中、βブロッカーの影響による徐脈中に心室期外収縮(PVC)が発生し、次の自己の心房興奮がPVCの不応期のためblockされた結果、DDIの補充心室ペーシングが入ることでPVC, VTが発生しVFに移行する所見が3回の心イベントすべてにおいて確認された。補充心室ペーシングが心イベントに影響した可能性を考え、房室結節機能の異常がないことを確認した後、ICDの抗徐泊ペーシング機能をDDIからAAIに変更したところ、同様の心イベントは認められなくなった。【まとめ】心筋障害や再分極障害における補充心室ペーシングで心イベントの発生に注意する必要があり、心イベント発生時の心内電位波形の再確認は重要である。