The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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ディベートセッション

この症例をどうする?

ディベートセッション02(II-DB02)
内科治療 vs 外科治療 「この症例をどうする?」2

Mon. Nov 23, 2020 4:00 PM - 6:00 PM Track3

座長:野村 耕司(埼玉県立小児医療センター 心臓血管外科)
座長:中川 直美(広島市立広島市民病院 循環器小児科)

[II-DB02-3] 未治療無脾症に対して共通房室弁置換、肺動脈絞扼術を実施した22歳の一例

保土田 健太郎1, 細田 隆介1, 永瀬 晴啓1, 枡岡 歩1, 鈴木 孝明1, 戸田 紘一2 (1.埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓外科, 2.埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科)

Keywords:pulmonary banding, severe CAVVR, SV

【背景】無治療で生存する無脾症患者は稀で、1年生存率は5%以下とされる。乳児期に単心室と診断されるも外科治療の機会を逸し、成人期房室弁逆流による心不全増悪に対して、本人の強い意思により外科治療に踏み切った症例を経験した。治療法の選択とそのプロセス、術式の工夫、剖検所見からのフィードバックを含め議論する機会としたい。【症例】22歳男性。自立した社会生活。【診断】無脾症、単心房、単心室、共通房室弁逆流、右肺高血圧、左肺動脈狭窄。【主訴】全身浮腫、腹満【現病歴】月齢1に単心室の診断。重症感染症の反復により外科的治療の機会を逸した。17歳時の心臓カテーテル検査:肺体血流量比2.0、右/左肺動脈圧41/10mmHg。他院で手術適応なしと判断。22歳時、共通房室弁逆流が増悪。感冒を機に心不全増悪し、大量腹水、CVP30mmHgを認め、持続透析を導入後当院に転院。【手術適応と術式の検討】心室容量負荷軽減のために肺動脈絞扼術と弁逆流制御が必要と考えた。しかし単心室収縮能は著しく低下し(EF40%)、耐術は困難と考えたが、本人・家族の強い希望に添い、リスクの理解と同意を得た上で手術治療を実施した。【手術】約8cmに拡大した房室弁の余剰弁尖を折りたたんで縫合糸をかけ機械弁33mmを縫着。全ての弁尖と腱索を温存。主肺動脈を直径15mmに絞扼した。【術後経過】単心室EF 15%前後、CVP15-20mmHgで推移した。強心剤・持続透析離脱困難、大量腹水漏出、上室性頻拍、真菌血症により治療に難渋。一時IABPを実施。気管切開後、座位訓練、経口摂取訓練導入に至ったが、縦隔気腫を機に全身状態悪化。術後3ヶ月時に永眠。【病理所見】両肺ともHeath-Edwards分類I-IIであった。【考察】(1)弁置換術後の後負荷増大に適応できなかった。(2)病理所見で肺小動脈の内膜細胞増殖や内腔狭小化は軽度であり、Glenn手術は可能か。(3)術前肺生検をすべきか。(4)若年心不全末期の緩和ケアに困難が伴った。