The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

胎児心臓病学

デジタルオーラル(II)09(P09)
胎児心臓病学1

指定討論者:桑原 尚志(岐阜県総合医療センター 小児医療センター)

[P09-4] 初回胎児心臓スクリーニングで細い大動脈弓を認めた、右上大静脈欠損を伴う左上大静脈遺残(persistent left and absent right superior vena cava)の1例

佐藤 工, 佐藤 啓 (国立弘前病院小児科)

Keywords:胎児左上大静脈遺残, 胎児右上大静脈欠損, 大動脈縮窄

【はじめに】左上大静脈遺残(PLSVC)は先天性心疾患の約10%程度に合併し、胎児診断される機会も少なくない。一般に右上大静脈(RSVC)が存在するが、RSVCを欠くPLSVCは非常に稀である。今回、初回胎児心臓スクリーニングで、persistent left and absent right superior vena cavaと診断し、3-vessel trachea view (3VTV)で動脈管弓(DA)に比して細い大動脈弓(AA)を認めて、大動脈縮窄(CoA)の可能性を念頭に経過観察した症例を経験したので報告する。【症例】妊娠30週の妊婦。胎児心臓スクリーニングを目的に当科を受診。内臓正位かつ4-chamber viewで左右心室バランスは正常であったが、左房内に大きく突出する拡張した冠静脈洞 (CS)を認めた。3-VTVでPLSVCを認め、RSVCは認めなかった。innominate veinは右側から左側に向かってPLSVCに合流していた。また、大動脈(Ao)弁輪径4.6 mm / 肺動脈(PA)弁輪径7.6mm 比= 0.61、Ao ishmus径3.0mm / DA径4.5mm 比=0.67とAAの方がDAより細かった。カラードップラー上AA、DAともに順行性血流であった。Ao弁の開放は良好で狭窄はないと判断した。卵円孔狭窄やその他の合併奇形を認めなかった。32週で胎児心エコーを再検し、Ao弁輪径6.2mm / PA弁輪径8.2mm 比= 0.76、Ao ishmus径4.7mm / DA径5.1mm 比=0.92と口径差は改善していた。児は在胎40週6日、2874g、自然分娩で仮死なく出生。出生後の心エコーは胎児診断と同様で、CoAを認めず、DAが自然閉鎖後も著変なく経過中である。【まとめ】本症例の初回胎児心臓スクリーニング時にDAに比して細いAAを認めた明確な機序は不明であるが、bilateral SVC症例以上に拡張したCSの左室流入血流に対する影響も完全には否定できない。しかし、文献的にはCoAとの関連性は低いとされる予後良好な疾患であることから、将来の中心静脈カニュレーション、ペースメーカーリード留置等の際に重要な解剖学的情報となる点に本症の出生前診断の意義がある。