第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

学校保健・疫学・心血管危険因子

デジタルオーラル(II)74(P74)
学校保健・疫学・心血管危険因子3

指定討論者:太田 邦雄(金沢大学附属病院 小児科)

[P74-3] 鈍的な胸部打撲により失神を来した2例

尾崎 智康1, 蘆田 温子1, 小田中 豊1, 岸 勘太1, 片山 博視2, 芦田 明1 (1.大阪医科大学泌尿生殖・発達医学講座小児科学教室, 2.高槻赤十字病院小児科)

キーワード:心臓震盪, 院外心停止, 病院前救護

【緒言】鈍的な胸部外傷を契機に心室細動(いわゆる心臓震盪)や他の不整脈を生じ、失神や心臓突然死の原因となることがある。【症例1】12歳男子。サッカーの練習中に上級生の蹴ったサッカーボールが前胸部を直撃した。直後から呼吸困難感を訴え、しゃがんで横になろうとしたところ突然意識を消失し倒れた。30秒程度してから意識が自然回復し、自力歩行も可能となったが、明らかに失神していたため当院に救急搬送された。受診時、意識は清明で麻痺等は認めなかった。聴診では心雑音は認めなかったものの、II音の固定性分裂を認めた。心電図では完全右脚ブロックを認め、心筋逸脱酵素迅速検査は陽性であった。ただ、翌日には心筋逸脱酵素は正常化し、心音も正常化していた。これは心電図が正常化したことを反映していると考えられた。【症例2】11歳男子。ラグビーの試合中にボールを胸に抱えたまま転倒し前胸部を打撲した。その後、起き上がったものの前のめりに崩れ落ちた。周囲の家族・スタッフが駆け寄り、心肺停止状態であることが確認され、直ちに心肺蘇生(CPR)が開始された。CPRを継続しつつ、1分後にAEDを装着したところ心室細動が確認された。電気的除細動が適切に行われ、速やかに洞調律に回復した。その後、意識も回復した状態で3次医療機関に救急搬送され、精査目的で当院紹介となった。各種検査に異常は認められず、家族が撮影していたビデオ映像から「心臓震盪」と診断しえたケースであった。現在、後遺症は認めていない。【考察】鈍的な胸部打撲により心室細動が確認されれば「心臓震盪」と診断される。一方、過去の動物実験からは、胸部打撲で心室細動のみならず、一過性の完全房室ブロックも生じうることが報告されている。いずれも失神だけでなく突然死のリスクもあるため、胸部打撲後には慎重な経過観察と、素早く心肺蘇生が施せる様な体制作りと啓蒙活動とが重要である。