The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Digital Oral

術後遠隔期・合併症・発達

デジタルオーラルI(OR23)
術後遠隔期・合併症・発達 1

指定討論者:田中 敏克(兵庫県立こども病院)
指定討論者:野村 耕司(埼玉県立小児医療センター)

[OR23-2] ccTGAのダブルスイッチ術後にPLEを発症し中心静脈流路の狭窄解除が奏効した二例

矢野 瑞貴1, 大森 紹玄1, 佐藤 要1, 小川 陽介1, 田中 優1, 白神 一博1, 浦田 晋1, 朝海 廣子1, 松井 彦郎1, 犬塚 亮1, 平田 康隆2 (1.東京大学 小児科, 2.東京大学 心臓外科)

Keywords:蛋白漏出性胃腸症, 修正大血管転位症, 遠隔期合併症

背景:蛋白漏出性胃腸症(PLE)は先天性心疾患術後遠隔期の重篤な合併症として知られており, 中心静脈圧の上昇などが誘因と考えられているが, その病因は未解明な点が多い. また, 非Fontan術後においてもPLEは経験されるが, その報告はFontan術後と比較して少ない. 今回, 修正大血管転位症(ccTGA)のダブルスイッチ術後遠隔期にPLEを発症し, それぞれカテーテル治療, 外科治療により改善を得た二例を経験したので報告する.
症例1:ccTGA, PA, VSDに対してSenning+Rastelli型手術後の5歳男児. 術後2年の定期外来受診時に低アルブミン血症, 顔面浮腫を認め, 臨床的にPLEと診断した. 脂肪制限および高用量アルダクトン療法に反応せず, 心臓カテーテル検査でSVC baffle狭窄およびSVC圧上昇(12mmHg, 圧較差5mmHg)を認めた. IVC baffleの狭窄・圧較差は認めなかった. SVC baffle狭窄に対する経皮的血管拡張術(PTA)を施行し, 圧較差は1mmHgに低下した. 治療後, PLEは速やかに軽快した.
症例2:ccTGAに対しGlenn+hemi-Mustard術後の2歳男児. 術後1年の定期外来受診時に低アルブミン血症, 下腿浮腫を認め, 蛋白漏出シンチグラフィーでの回盲部異常集積からPLEと診断した. 心臓カテーテル検査ではIVC baffle狭窄およびIVC圧上昇(10mmHg, 圧較差6mmHg)を認め, 手術による狭窄解除を行い圧較差は1mmHgに低下した. ステロイド投与も併用し, PLEは速やかに軽快した.
考察:二症例とも静脈系baffle狭窄を契機にPLEを発症したと考えられた. 胸管閉塞などに伴う腸リンパ管拡張がPLEの原因となることは過去に報告されており, 症例1はSVC baffleの狭窄であったが, 胸管圧上昇を介してPLEを発症したと考えられた.
結語:ccTGAのダブルスイッチ術後遠隔期には静脈系baffle狭窄の進行によるPLEを発症する場合があり, カテーテル治療や外科治療による狭窄解除は病態改善に有効である.