[OR36-2] 三尖弁逆流を合併した左心低形成症候群に対する三尖弁手術成績の検討
Keywords:左心低形成症候群, 三尖弁逆流, Norwood手術
【目的】左心低形成症候群(HLHS)における三尖弁逆流(TR)は、その予後に大きな影響を与えることが知られている。TRに対する手術時期、手術方法及び成績について検討した。【方法と対象】2010年4月から 2021年2月までに Norwood 手術(NW手術)を行った典型的HLHSは92例で、25例に三尖弁手術(TVS)を計33回施行した。中等度以上の三尖弁逆流(TR)を適応として三尖弁手術を施行した25例を対象とした。【結果】初回TVSの年齢は生後112日(30日-233日)、初回TVSの体重は 3.56kg(2.45-4.6g)であった。併存疾患は三心房心が2例、TAPVDが1例、PVOが1例であった。術式は、初回TVSで弁輪縫縮単独17例、 弁輪縫縮+edge-to-edge形成術が3例、弁輪縫縮+交連閉鎖術2例、弁輪縫縮+乳頭筋つり上げ術1例、交連閉鎖+edge-to-edge形成術が1例、edge-to-edge形成術単独が1例であった。初回TVSでTRの制御が困難な3症例で、三尖弁置換術を施行した。術後観察期間は、16.5カ月(10-43.8)であった。TVSを行なった全25例の術後生存率は、1年で74.5%、3年で60.2%、5年で60.2%であった。初回TVS後の、中等度以上のTR再発回避率は、1年で75.2%、3年で51.3%、5年で27.4%であった。NW手術時にTVSを要した群は、NW手術以降TVSを要した群と比べ、中等度以上のTRが再発した(p=0.047)。TVSの術式は、術後生存率や術後TR再発回避率に影響を与えなかった。TCPC後の心臓カテーテル検査において、三尖弁手術介入群は、中心静脈圧10.3±2.5mmHg、心係数3.42±0.61l/min/m2、動脈血酸素飽和度93.4±2.34%と良好なフォンタン循環を示し、三尖弁非介入群と比較して同等の成績であった。【結語】HLHSの外科治療において、中等度以上のTRを認めた時期に積極的にTVSを行うことで、生存率を向上させることが可能で、TVSを要さない症例群に劣らないフォンタン循環の確立が可能である。