[P25-4] 新生児遷延性肺高血圧症を合併した完全大血管転位症1型の4例
Keywords:大血管転位症, 新生児遷延性肺高血圧症, 大動脈スイッチ術
【背景】完全大血管転位症(TGA)は早期の大動脈スイッチ術(ASO)による周術期死亡率が低く,長期生存率も良好な疾患であるにも関わらず,完全大血管転位症1型(TGA type1)の新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)合併例は高い早期死亡率を示す.【目的】PPHN合併TGA type1における急性期の治療方針を検討する.【対象】2010~2020年に当院で治療を行ったTGA type1 15例のうち,卵円孔もしくは動脈管血流が右左優位,またはSpO2上下肢差が5以上あり,PPHN合併と診断された4例.【方法】それぞれについて,治療介入(バルーン心房中隔裂開術(BAS),一酸化窒素療法(NO),PGE1等)を比較し,ASOに到達するまでの経過を後方視的に検討した.【結果】4例全例が正期産児で,出生体重は3428(2926-3900) gであった.全例で日齢0にBASを施行.NOも全例で使用しており,使用最大量は15(5-20) ppm,使用期間は3(1-16)日間であった.PGE1製剤はLipo-PGE1で最大5 ng/kg/min使用したのが1例と,PGE1-CDで最大100 ng/kg/minで使用したのが3例であった.PaO2/FiO2(P/F ratio)の最低値は21.1(19.7-34.0)で,P/F ratio>100となったのは日齢2.5(1-14)であった.4例中1例で,PPHN改善に時間を要し,筋弛緩まで用いた完全鎮静管理,高頻度振動換気法での呼吸管理,バソプレシンを含めたカテコラミンの使用を行った.全例でASOに到達し,日齢15.5(5-22)で手術を施行された.【結論】酸素投与やNO使用で改善が得られない重症PPHNを合併している場合,肺血管拡張を狙った高用量PGE1の使用や,バソプレシンを含めたカテコラミンでの体血管抵抗上昇が有効である可能性が考えられた.