The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

Digital Oral

一般心臓病学

デジタルオーラルII(P3)
一般心臓病学 3

指定討論者:廣田 篤史(国立循環器病研究センター 小児循環器内科)
指定討論者:本村 秀樹(国立機構長崎医療センター 小児科)

[P3-6] 心疾患術後乳糜胸にミドドリン塩酸塩を使用し著効したNoonan症候群の2症例

妹尾 祥平, 井上 忠, 住友 直文, 小柳 喬幸, 古道 一樹, 山岸 敬幸 (慶應義塾大学医学部 医学科)

Keywords:ミドドリン塩酸塩, Noonan症候群, 乳糜胸

【背景】開胸術後の合併症に乳糜胸があり、リンパ管形成異常を伴う場合はリスクはさらに増加する。多量の乳糜胸水は致死的となるため、早期の治療介入が必要となり、保存的治療は禁飲食、オクトレオチド、エチレフリンなどがある。近年では選択的α1受容体刺激薬のミドドリン塩酸塩の使用も報告されるが、報告数は少ない。今回は心疾患術後に乳糜胸を呈し、ミドドリン塩酸塩を併用し、著効したNoonan症候群の症例を経験したので報告する。【症例】症例1:Noonan症候群、1歳女児。心房中隔欠損症、肺動脈弁狭窄、肺動脈弁上狭窄に対して、心房中隔欠損孔パッチ閉鎖、右室流出路再建、肺動脈弁形成を実施。術当日から多量の胸水を認め、胸水所見から乳糜胸と診断。術後1日からオクトレオチド投与を開始、胸水はさらに増加したため、術後2日にオクトレオチド増量し、ミドドリン塩酸塩投与を開始。術後3日から胸水が減少。麻痺性イレウスのため術後4日からオクトレオチドは減量・中止、ミドドリン塩酸塩のみ継続。術後6日には乳糜胸水は消失、その後も再発なく経過した。症例2:Noonan症候群、生後4日女児。大動脈縮窄症に対して大動脈形成術を実施。術後に肺出血がありECMO管理となった。その後多量の乳糜胸水を認め、オクトレオチド、凝固13因子、ヒドロコルチゾンの投与を行なったが、改善せず。術後20日からミドドリン塩酸塩投与を開始、術後23日から乳糜胸水は減少、術後39日には消失した。いずれの症例もミドドリン塩酸塩投与開始後に高血圧、頻脈などの副作用は認めなかった。【結語】2症例ともミドドリン塩酸塩投与後3日以内に乳糜胸水の減少を認め、副作用は認めなかった。これらのことからNoonan症候群の心疾患術後乳糜胸の治療としてミドドリン塩酸塩が有効であり、安全に使用できると考えられる。