第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

一般心臓病学

一般口演03(I-OR03)
一般心臓病学 II

2022年7月21日(木) 09:40 〜 10:30 第6会場 (小ホール)

座長:加藤 温子(国立循環器病研究センター 小児循環器科)
座長:河津 由紀子(福山市民病院 小児科)

[I-OR03-02] 循環作動薬過量服用により緊急搬送された2例

熊本 崇, 土井 大人, 峰松 伸弥 (佐賀大学医学部付属病院 小児科)

キーワード:Ca拮抗剤, 過量内服, 体外循環

循環器系薬剤は血行動態の改善や心負荷軽減目的に処方されるが、時に自死を目的とした過量内服事例が発生する。循環器薬を過量内服した場合は残存する薬物の除去、出現した症候に速やかに対処することが望ましく、また過量内服を行った社会背景にも目を向け再発予防に努める必要がある。【症例1】15歳女児。12歳時に初めて動悸を自覚し中学校1年次の学校検診でWPW症候群と診断され当院を紹介された。間欠型WPW症候群と診断しΔの波の局在から前中隔副伝導路が疑われフレカイニドを開始した。頻拍発作を繰り返すためカテーテルアブレーションを施行したが焼灼できずベラパミル(VRP)を追加した。15歳時に親と口論の後VRPを過量内服しトイレで嘔吐しているところを発見され当院へ救急搬送された。徐脈や血圧低下、高血糖などの所見はなく、胃洗浄・血液吸着(DHP)を施行。重篤な合併症はなく、内服量は少ないと判断し、精神科・MSW・児童相談所の介入を行った。【症例2】22歳女性。肥大型心筋症、ヌーナン症候群で当科通院中、ビソプロロール(BF)5mg・VRP120mg・シベンゾリン(Cib)150mg内服していた。母と口論後に衝動的にBF7.5mg・VRP200mg・Cib150mgを内服し意識朦朧となったため自身で救急車を要請し救急搬送された。来院時JCS1桁であったがHR30-40bpmの補充調律、血圧49/29mmHgと低下していた。アトロピン・カルチコールに反応なく一時ペーシングを行ったが血圧は上昇せず、ノルアドレナリン静注・IABPを挿入後も改善せず体外循環を開始した。12時間後には自己心拍出が保てるようになりECMOを離脱することができ、精神科・MSW介入し環境調整中である。思春期~若年成人期の問題行動には患者周囲の環境や患者自身の知的・精神的素因にも影響を受け衝動的な行動を起こしうることを再認識した。