[I-P2-5-03] 右室機能の差が治療経過に影響したドキソルビシン心筋症の2例
Keywords:心筋症, ドキソルビシン, 右心機能
【背景】アントラサイクリン系薬剤による心筋障害は非可逆的で予後不良であるが、左室機能に加えて右室機能低下を合併することがある。私たちは、治療経過の異なるドキソルビシン(DOX)心筋症の2例を経験した。【症例】症例1は12歳女児。化学療法でDOX 450mg/m2を投与した。治療終了35日目に倦怠感・咳嗽を認めDOX心筋症と診断した。BNP 1,515pg/mL、胸部X線でCTR 60%の心拡大と肺うっ血像を認めた。心臓超音波検査で左心拡大、LVEF 26% 、LV global longitudinal strain(GLS) -7.5%、RV fractional area change(FAC) 11.7%、RV freewall longitudinal strain(LS) -13.7%と両心不全を認めた。ドブタミン(DOB)・ドパミン(DOA)・ホスホジエステラーゼ(PDE)3阻害薬、利尿薬で急性期治療を行い、β遮断薬、ACE阻害薬を導入した。治療開始90日で、BNP 1,035pg/mL、CTR 63%、LVEF 27%、RV FAC 13.2%と両心不全が続いた。180日でRV FAC 46.0%、210日でLVEF 32%と徐々に改善したが、循環作動薬の離脱に330日を要した。症例2は3歳女児。化学療法でDOX 360mg/m2を投与した。治療終了32日目に浮腫・咳嗽・下痢・活気不良を認め、DOX心筋症と診断した。BNP 5,430pg/mL、胸部X線でCTR 68%で肺うっ血像を認めた。心臓超音波検査で左心拡大、LVEF 23%、LV GLS -6.7%、RV FAC 20.6%、RV freewall LS -22.3%と両心不全を認めた。DOB・PDE3阻害薬、利尿薬で急性期治療を行い、β遮断薬・ACE阻害薬を導入した。治療開始90日でBNP 406pg/mL、CTR 51%、LVEF 35%、RV FAC 58.0%であり心不全は改善した。【考察】2症例とも左室機能低下と両心不全を認めたが、右室機能低下の強い症例1では症例2より心機能の回復に時間を要した。右室機能が低下したDOX心筋症では右室の拡大や後負荷の増大が心室間相互作用により左室の前負荷や収縮性を低下させる可能性があるため、経時的な右室機能の変化に留意しながら治療を行う必要がある。