[I-P2-5-05] 小児がん患者に対する、早期の心毒性検出のための心筋ストレイン解析(第1報)
Keywords:がん治療関連心筋障害, 心筋ストレイン解析, Global longitudinal strain
【背景】がん治療関連心筋障害は、早期に診断し治療介入すると予後が改善することが示されており、循環器専門医が積極的に取り組むべき課題である。成人領域では早期の心毒性検出のためスペックルトラッキング心エコー図法を用いた局所心筋のストレイン解析が用いられているが、小児領域での有用性の報告は限られている。【目的】小児がん患者に対する心筋ストレイン解析の実施可能性、有用性について検討する。【対象・方法】2019年9月~2021年10月に当院で入院した初発の悪性腫瘍を有する小児患者のうち、同意を取得した6例を対象に、治療前から3カ月毎に心筋ストレイン解析を行い、左室のGlobal longitudinal strain(GLS)を評価する前向き観察研究を実施しており、途中解析及び問題点の抽出を行った。【結果】治療開始時の年齢2-12歳(中央値4歳)、男児が3名(50%)、原疾患は急性リンパ性白血病が4例、急性骨髄性白血病が1例、Burkittリンパ腫が1例であった。全例でアントラサイクリン系薬剤を含めた多剤併用化学療法が行われた。観察期間は3カ月~24カ月で、全例で計24ポイントの計測を行なった。基礎値となる治療前のGLSは平均22.7%(20.4%-24.7%)であった。治療開始後のGLSの基礎値からの変化率には+19%から-37%までの大きな変動が見られたがいずれも一過性で、左室駆出率が低下した症例はなかった。なお、GLSは全例で継続して測定可能であったが、全計測のうち11ポイントで、検査中に10%以上の心拍数の変動があった。【考察】小児においても日常診療の範囲内でGLS計測が可能であり、成人と同様に、化学療法中のGLSの変動から潜在性の心筋障害を検出し、早期に診断と治療介入が可能となれば予後を改善できると考えられる。しかし、心拍数の増加によりGLS測定値が低下することには注意が必要であり、心拍数変動に伴う測定値の解釈、及び心毒性の早期の指標となるカットオフ値の設定には更なるデータの蓄積を要する。