[I-P2-7-04] 若年性生物学を通した小児循環器難病の治療戦略探索
Keywords:若年性遺伝子, 若年性トランスクリプトーム, バイオインフォマティクス
【背景】 小児期には「成長」や「成熟」などの特有の生理的性質が備わっており、「若年性 (juvenility)」 と位置づけて分子基盤を調べている。若年性は、脆弱な小児が生き抜くための生存戦略となっていると考えられるが、そのような大人にはないアドバンテージを活用した治療戦略には前例が少ない。【目的】 成長や成熟を可能にする生命原理を明らかにするためマウスモデルにおいて若齢期の分子解析を行い、小児細胞に特有の生命現象を実現する分子メカニズムを解明する。さらに観察された分子現象と小児難病の関連を調べ、新規の治療戦略として位置づける。【方法と結果】 若年期に豊富に発現している遺伝子に着眼することで、小児期に際立った分子機能を同定する試みを進めた。小児期に特異的に発現の高い遺伝子群として、「若年性遺伝子 (juvenility-associated genes, 以下 “JAG”)」 を同定した。JAGは多彩な機能をもち、予想外の知見を与えた。若年期に特有のオルタナティブ・スプライシングを担うSRSF7や心臓線維芽細胞に存在している一次線毛 (primary cilia) の形成に必須なBEX1を同定した。また、バイオインフォマティクスを活用したアプローチにより新規の脂質制御分子を同定し、さらに臓器のシングル・セル解析により分子機構の一端が明らかとなってきた。 【考察】 小児期に特有の分子機構を調べることで、子どもと大人の違いが明らかとなり、若年性を実現しているメカニズムの理解につながる。さらなる研究により、若年性の異常がどのように小児循環器疾患の発症に至るか、また若年性が治療的観点からどのように治療標的となるかを明らかにしていく。