The 58th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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会長要望セッション

会長要望セッション1(I-YB01)
小児循環器科医の立場からPOTS(Postural Orthostatic tachycardia Syndrome)を考える

Thu. Jul 21, 2022 8:40 AM - 10:10 AM 第4会場 (中ホールA)

座長:小川 禎治(兵庫県立こども病院 循環器科)
座長:松浦 優子(国立病院機構災害医療センター 小児科)

[I-YB01-03] 体位性頻脈症候群(POTS)における生理食塩水負荷新起立試験/ヘッドアップチルト試験の有用性

實川 美緒花1,2, 高室 基樹1, 澤田 まどか1, 名和 智裕1, 西村 和佳乃1 (1.北海道立子ども総合医療・療育センター 小児循環器内科, 2.手稲渓仁会病院小児科)

Keywords:POTS, 新起立試験, ヘッドアップチルト試験

【目的】起立性調節障害(OD)の一病型である体位性頻脈症候群(POTS)における水分および塩分摂取の有効性を、生理食塩水負荷試験で確認すること.【方法】OD12例に新起立試験(OT)ないしヘッドアップチルト(HUT)試験を行った.OTは小児OD診断・治療ガイドライン2011に依った.POTSの判定は,(1)起立3分後35/分以上の心拍数上昇,(2)起立3分後以降の平均心拍数115/分以上の1項目を満たせば軽症,2項目を満たせば中等症とし,(1)が45/分以上と(2)が125/分以上のいずれかを満たせば重症,両者を満たせば最重症とした.HUTは臥位10分後に75度でチルトし起立不耐を終了点とし,OTと同じ基準で判定した.翌日POTSの7例に生理食塩水(NS)1Lを2時間で補液後再検査した.判定項目はpaired t-testを行いp<0.05を有意とした.【結果】男女同数,年齢11~16(中央値13.1)歳.OTは10例,HUTは5例に施行し(重複例あり),POTS(軽症2,中等症1,重症6,最重症2)と判定した11例中7例(軽症1、中等症1、重症3、最重症2)にNS負荷しOTないしHUTを再検したところ全例で何らかの改善を認めた(正常2,軽症2,重症3).判定項目では心拍数増加が50.4±14.9から30.9±14.8へ減じ(p=0.02),最大心拍数が134±7.5から118±10.5へ減少した(p=0.02).起立耐容時間も9.8分から13.1分へ延長(対数変換後のpaired t-検定,p=0.045)していた.対象児にNS負荷結果を提示して水分・塩分摂取の重要性を説明した.また1例ではNS負荷で心拍数が正常化したにも拘わらず過換気を伴う起立不耐を呈し心理的側面が大きいと考え児童精神科に紹介した.【考察】NS負荷による心拍数値の改善を示すことは水分と塩分摂取の励行に役立ち,ライフイベント時のレスキューとしての応用にも期待できる.OTやHUTで心拍数を客観的に示すことでPOTSの主訴への寄与も明瞭となり,心理的アプローチを促す契機になるとも考えられた.