[II-OR18-03] LVAD管理中の右心機能からみたBiVADの必要性の考察
Keywords:重症心不全, BiVAD, 右心機能
【背景】小児の左室補助人工心臓(LVAD)管理中の右心不全合併例に対する両心補助(BiVAD)の適応には明確な基準がない。自己の心機能が廃絶した後もLVADのまま心臓移植に到達した症例の経験を機に、右心機能からみたBiVADの必要性について考察した。【方法】当院でVAD管理を行った20歳以下の症例に対し、VAD装着前後の右心機能と臨床経過について後方視的に検討した。なお、本研究では心エコーでのRVFACが20%未満の場合に重度の右心機能低下(RVD)と定義した。【結果】Berlin Heart EXCOR 13例(導入時年齢1歳11か月(2か月~13歳))、植込み型16例(導入時年齢17歳(11~20歳))の計29例が対象で、原疾患は拡張型心筋症が23例であった。BiVADは4例(EXCOR 1例、植込み型3例)で、RVADが必要と判断されたのはLVAD装着の術中1例、急性期1例(心嚢内血腫合併)、遠隔期2例(右心不全増悪)であった。LVAD装着前にRVDを呈した14例のうち、LVAD装着半年以内に9例がRVDから回復、5例はRVDが遷延し、うち4例がBiVAD症例であった一方、残り1例はLVADのまま待機可能であった。また、BiVADの要否と平均肺動脈圧や肺血管抵抗に相関はなかった。当初RVDを呈さなかった症例のうち、EXCORの1例でLVAD装着19か月後に難治性心室頻拍により自己の両心機能が完全に廃絶したが、LVADのみで合併症なく待機し、その5か月後に心臓移植に到達した。【考察】今回の検討で、右心機能低下を伴うLVAD症例は肺高血圧や拡張障害がなければFontan循環と同様に成立するが、VAD循環を悪化させるイベントの発生によってBiVADに移行しうる可能性が示唆された。一方、本邦よりBiVAD率の高い北米では、右心不全合併例へのBiVADのLVAD単独に対する優位性が疑問視され、BiVAD率の低下にも関わらず成績は向上しており、予防的なBiVAD装着の根拠に乏しい。右心機能低下はBiVADの必要条件であっても十分条件ではなく、慎重なLVAD管理で対応できる可能性がある。