[II-P5-7-02] 心室中隔欠損症に合併したExtremely high take off left coronary artery の症例の経験
Keywords:高位冠動脈起始, 心室中隔欠損症, 小児心臓手術
【背景】高位冠動脈起始は先天性心疾患のうち0.2%と稀な疾患であり、その84.5%以上が右冠動脈に生じると報告されている。小児における高位冠動脈起始は、バルサルバ洞・上行大動脈接合部(STJ)からバルサルバ洞の深さの20%以上頭側から起始するものと言われている。今回、その割合を遥かに超える高位から起始した左冠動脈を術中に偶発的に確認した心室中隔欠損症(VSD)の症例を経験したので報告する。【症例】月齢7ヶ月、7.2kgの女児。心エコーでVSDと診断され、心臓カテーテル検査を経て根治術目的で紹介となった。術前に冠動脈走行異常の指摘はなかった。術中大動脈テーピーングのための剥離中に右肺動脈上縁の位置に上行大動脈背面に2mm程の隆起を認めた。上行大動脈を左方へ牽引すると2度徐脈を繰り返したため、心臓カテーテル所見を見直し、高位左冠動脈起始と術中診断した。送血カニュラ挿入部を大動脈弓直前とし、大動脈背面の隆起にかからないよう大動脈を遮断。VSD閉鎖後の大動脈遮断解除後、正常リズムで心拍再開し、人工心肺装置からも問題なく離脱した。術後合併症なく術後12日に退院。造影CT所見、心臓カテーテル所見上、左冠動脈はSTJから約120%頭側から起始していた。【考察】近年、VSDに対しては心臓カテーテル検査等の侵襲検査が省略され、心エコーでの診断で根治術に至る症例は増加傾向にある。また、術中手技の簡易化により上行大動脈周囲の剥離を行わない場合もある。右冠動脈走行異常とは異なり、本症例のように上行大動脈後面を走行する高位左冠動脈起始は術中に把握するのは困難である。上行大動脈を遮断する手術手技では、左冠動脈を遮断する恐れがあり、術前検査での指摘がより安全である。【結論】VSDに合併した高位左冠動脈起始の症例を経験した。術中の不整脈発生や大動脈遮断後に心停止が得られない場合は、冠動脈走行異常を念頭においての対処が必要である。