[II-P5-7-06] 幼児期・学童期における人工心肺管理の検討
Keywords:小児人工心肺, 灌流量, ヘモグロビン
【背景および目的】当院では、10kg以上の患児に対する人工心肺(CPB)の予定灌流量は一律に2.4L/min/m2で施行している。幼児期と学童期を比較した際に、体格あたりの酸素消費量を考慮すると幼児に対して灌流量不足の懸念がある。これらを検証するために幼児期・学童期のCPB症例について比較検討したので報告する。【方法】2014年1月から2020年12月までに無輸血で心房中隔欠損閉鎖術を行なった58例を対象とした。6歳未満を幼児群(24例)、6歳以上12歳未満を学童群(34例)として各種パラメータについて比較検討を行った。【結果】体重の中央値は、幼児:16.4[四分位範囲14.8-17.7]kg、学童:20.7 [18.3-23.8]kg、体表面積は、幼児:0.69[0.63-0.72]m2、学童:0.84 [0.76-0.92] m2であった。CPB時間(幼児:44[39-63]分、学童:47[38-58]分、p=0.745)、大動脈遮断時間は、(幼児:21 [15-29]分、学童:20[15-31]分、p=0.624)有意差を認めなかった。希釈率は、学童群で有意に低く(幼児:32 [30-34]%、学童:28 [25-31]%、p<0.001)、CPB中の最低ヘモグロビン(Hb)は、学童群で有意に高かった(幼児:7.8[7.4-8.3]g/dL、学童:8.8 [8.3-9.3]g/dL、 p<0.001)。乳酸値(Lac)は、麻酔導入後(幼児:0.9 [0.8-1.0]mmol/L、学童:1.2 [1.0-1.7]mmol/L、p<0.001)、CPB開始直後(幼児:1.2 [0.9-1.6]、学童:1.8 [1.1-2.8]、p=0.015)、CPB終了後(幼児:2.2 [1.9-2.7]、学童:3.0 [2.1-4.4]、p=0.015)、ICU入室後の最高値(幼児:3.2 [2.1-4.0]、学童:4.6 [3.2-6.1]、p=0.008)において学童群が有意に高かった。術後に急性腎不全分類1以上を合併した症例はなく、全例軽快退院した。【考察および結論】従来の灌流量の概念は、刷新しなければならない。特に幼児期・学童期患児のCPB管理方法についてHbや灌流量だけでなくその他のパラメータも含めてさらなる検討が必要であると考える。