[II-P5-7-08] 術前重症肺高血圧症を伴った先天性心疾患根治術時の肺動脈圧モニターラインの有用性
Keywords:肺高血圧症, 肺動脈圧モニター, 術後管理
【背景】術前に肺高血圧症(PH)を伴った心室中隔欠損症(VSD)の根治術時における肺高血圧発作(PH crisis)は重篤な合併症である。わ術後持続的肺動脈圧モニターライン(PAP catheter)の留置の有効性について検討する。【対象と方法】対象は新病院に移転以後の2018年1月から2021年12月までの3年間に根治術を施行した術前に高度PHを合併した11例で、これらを術後PAP catheterを留置した6例(M群)と留置しなかった6例(C群:VSD症例5例、ASD+PDA症例1例)と留置しなかった5例(C群:VSD症例5例(内、Down syndrome: 3)に分け、比較検討した。術後は全例PICUで小児集中治療医が主として術後管理を行った。カテーテル留置手技をビデオで供覧する。【結果と考察】M群では肺動脈圧ライン挿入部位にはエラスティック糸によるタバコ縫合を置き、抜去時の出血予防措置とした。手術時年齢体重、術前カテーテル検査データに群間差なし。大動脈遮断時間はM群:35±15分、C群:70±17分(P=0.0008)。術後1日目の肺動脈圧/大動脈圧比(PAP/AoP)はM群:0.34±0.10、C群(心エコー推定値):0.37±0.06(P=0.509).。挿管期間はM群:1.0±0.0日、C群:3.4±1.0日 (P=0.05)。M群では、抜管後に覚醒が強くなると肺動脈圧は上昇傾向となる症例が確認できた。特にDown syndromeの2例では等圧になるエピソードが数回あり、その都度、鎮静薬増量、100%酸素投与などの処置が行われたが、肺動脈圧>大動脈圧、血圧低下、徐脈等のエピソードはなかった。また、C群では血圧変動時に正確な肺動脈圧がわからないためか、手探りの術後管理となり、抜管が有意に遅くなった。M群は全例術翌日に抜管し、PAP catheterは第2-3病日に抜去した。抜去に伴う出血性合併症はなかった。【結語】術後肺動脈圧をリアルタイムにモニターすることで、PH crisisの発生を防ぐことが容易となり安全性が増し、また肺血管拡張薬の効果判定の点からも有用であり、術後管理に有効。