[II-P5-7-10] プロタミンアレルギー症例に対する小児開心術の経験
Keywords:cardiac surgery, Protamine allergy, cardiopulmonary bypass
【はじめに】開心術における体外循環の抗凝固剤には、ヘパリンが用いられ、体外循環終了時にプロタミンで中和するのが一般的である。今回プロタミンアレルギーを有する症例に対する開心術を経験したので、文献的考察を加えて報告する。【症例1】11歳女児。診断:大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症(ASR)。手術:大動脈弁形成術(AVP)。麻酔導入時にアナフィラキシーショックを起こし、手術中止。原因薬剤検索のため、皮内テスト行い、ベクロニウムアレルギー及びプロタミンアレルギーの確定診断。初回手術症例であり、プロタミンを使用しない手術を計画。止血に時間を要した。心停止時間:82分、人工心肺時間:123分、手術時間:8時間8分。【症例2】8歳男児。診断:大血管転位症(TGA)術後、左冠動脈回旋枝(LCx)閉塞、陳旧性心筋梗塞(CMI)、大動脈弁閉鎖不全症(AR)。手術:AVP。前医心臓カテーテル検査時に使用したプロタミンでアレルギー症状出現。当院における負荷試験でも同様にアレルギー症状出現し、確定診断。再手術症例で、主肺動脈及び大動脈離断を必要とする、手術侵襲・剥離量を考慮し、プロタミンを使用しない手術は出血のリスクが高いと判断し、術前日よりステロイド投与を行い、通常通り体外循環終了時にプロタミンを使用。アレルギー症状を起こすことなく、プロタミン投与が可能で、通常の止血を得ることが出来た。心停止時間:107分、人工心肺時間:238分、手術時間:10時間8分。【まとめ】成人症例ではヘパリンの代わりにフサンを使用する報告も散見されるが、小児において、再手術症例で人工心肺時間が長時間となる可能性がある症例では血栓のリスクが低くはない。全てが症例2のようにアレルギー症状が出現せず手術が遂行出来るとは限らないが、今回の経験により、プロタミンアレルギーを有する症例に対する開心術における一選択肢を示すことが出来、今後の症例の参考になると考える。