[II-SY14-05] 先天性無脾症候群における感染症予防および重症感染症罹患に関する疫学研究
Keywords:先天性無脾症候群, 細菌感染症, 感染管理
【背景】先天性無脾症候群を含む脾機能低下症では、莢膜細菌による感染が重症化しやすく、時に致死的な経過をたどる。米国や英国では、脾機能低下例に対する感染管理の指針が具体的に示されているが、日本には具体的な指針が存在せず、感染管理に関して主治医や各医療機関が個別に対応している。【目的】日本国内における先天性無脾症候群に対する感染管理の現状・課題を明らかにすることである。【方法】全国の日本小児循環器修練施設/修練施設群に対して質問紙調査法を用いて、2015~2019年間における「重症感染症」、「発熱時対応」、「抗菌薬の予防内服」、「予防接種」の4つの項目に関してデータ収集を行った。【結果】118施設(81.9%)から回答を得た。重症感染症を経験した施設は24施設(20.3%)であり、死亡例を経験したのは6施設だった。原因菌は肺炎球菌が多かった(肺炎球菌 22施設、インフルエンザ桿菌 3施設、髄膜炎菌 1施設 ※重複あり)。「発熱時対応」で、発熱時の積極的な受診を指導している施設は全体の29.7%であった。「抗菌薬の予防内服」は、「有」51.7%、「無」48.3%だった。23価肺炎球菌ワクチンおよび髄膜炎菌ワクチンは、62.7%の施設が積極的な接種を指導していたが、多くの施設が接種回数を決めていなかった(23価肺炎球菌ワクチン 70.4%、髄膜炎菌ワクチン 89.0%)。【考察・結語】施設毎の調査のため、重症感染症の罹患率、死亡率、各症例の感染管理状況は不明である。しかし、本研究においても、先天性無脾症候群における重症感染症は予後不良であることが予測された。感染管理の方針も施設毎に大きく異なり、先天性無脾症候群の予後改善のため、日本国内においても感染管理指針を策定していく必要がある。我々は、先天性無脾症候群の症例数、各症例(特に重症感染症罹患例)の感染管理状況を把握するため、症例ベースの追加調査を計画している。各施設のご協力をお願い致します。