[II-SY14-06] 小児肺動脈性肺高血圧患者における診断前学校心電図所見の検討:多施設共同研究
Keywords:肺動脈性肺高血圧, 学校心臓検診, 多機関共同研究
肺動脈性肺高血圧(PAH)は、BMPR2などの遺伝子変異や先天性心疾患などに伴い発症する予後不良疾患であり、小児の重要な死亡原因である。特発性/遺伝性PAH(I/H-PAH)は小児のPAHの57%を占めている。2000年代以降は、新規治療薬が開発され、I/H-PAHの生存率は、2年90%、5年75%となり予後の改善が認められるが、依然予後不良である。12歳以上の患者においては、早期(WHO機能分類II)のPAHに対する治療介入の有用性が報告され、早期診断の重要性が認識され、膠原病患者や遺伝子変異保有者などPAHのハイリスク群では、早期診断のためのスクリーニングが試みられている。日本ではPAHの学校心電図検診による診断が報告されており、2012-2015年に当学会学術課題研究としておこなった調査ではI/H-PAH患者の32%、学童以降の患者に限れば41%が学校検診を契機に診断されていた。診断時心電図では94%の患者が異常を示し、本症診断における心電図検診の意義を示した。研究では心電図検診で発見できる患者は“肺動脈圧は上昇するが、症状が乏しく、右室機能が保たれる”特徴的な集団であることを示したことも重要な知見であった。前研究では、実際の心電図所見とPAHの発見前の心電図所見の経過が不明である。2020年度当学会研究委員会研究(課題B)として、小児I/H-PAHの診断前学校心電図の検討を実施中である。2005年1月以降に、新規に診断した、診断時年齢6歳以上18歳以下のI/H-PAH患者を対象とした既存資料を用いた観察研究。小児循環器学会専門医修練施設を対象に、PAH診断時並びに診断前の学校心電図記録を過去に遡って解析する。1次調査では143施設中118施設(82.5%)から回答があり、症例ありは、45施設(38%)であった。2022年5月までに83例の196回の解析可能な心電図データが収集された。今回、中間報告として解析結果を報告する。