The 58th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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シンポジウム

シンポジウム15(II-SY15)
テイラーメイド医療から創薬まで~生物工学の発展と小児循環器領域への応用~

Fri. Jul 22, 2022 8:30 AM - 10:00 AM 第4会場 (中ホールA)

座長:古道 一樹(慶應義塾大学医学部 小児科学教室 小児科)
座長:横山 詩子(東京医科大学 細胞生理学分野)

[II-SY15-02] 重症心不全に対する再生医療を用いたトランスレーショナルリサーチ

宮川 繁 (大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科)

Keywords:再生医療, 心筋症, 心不全

これまで重症心不全の克服を目指し、重症心不全に対して、再生医療技術を用いて人工組織を作成し移植する新しい治療法の開発を行っている。今回、我々は、重症心不全に対する細胞シートを用いたトランスレーショナルリサーチについて報告する。我々は、新しい心不全の治療法として、細胞シートを用いた組織移植法を開発した。自己筋芽細胞シートを小大動物心不全モデルに移植したところ、心機能の改善、生存率の向上がみられた。筋芽細胞シートの再生効果は、筋芽細胞より分泌される多種のサイトカインによる血管新生、幹細胞の集積によるものであることが判明した。その結果を踏まえ、LVADを装着したDCMに対する臨床試験を4例に行い、うち2例は心機能の回復を認め、LVADより離脱した。また、LVADを装着していないICM、DCM患者に自己筋芽細胞シートを移植した。これらの患者の一部において、reverse remodeling効果を認めた。現在、筋芽細胞シート(商品名:ハートシート)は虚血性心筋症に対して保険収載された。また小児心筋症に対しても医師主導型治験を実施し、安全性、実行可能性に関して検証を行った。近年、我々は、iPS細胞由来心筋細胞を用いたシートを作成し、同組織の安全性、有効性の検証を行っている。特に、移植したiPS細胞由来心筋細胞のレシピエント心筋との同期的挙動、及び筋芽細胞シートと比較した優位性を検証するとともに、心筋細胞の大量培養法や安全性の検証システムを構築し、医師主導型治験下にて虚血性心筋症患者に対してFirst in human試験を行った。iPS細胞は移植のみならず、疾患特異的iPS細胞を用いた心筋症の病態解明を行っており、今後オーダーメード医療の一つのきっかけになると考えられる。今後、心筋症の病態が解明され、細胞シート治療の重症心不全に対する有効性が臨床的に証明されることにより、心不全治療の新たな扉を開くことが期待される。