[II-SY15-03] 若年性に着眼した循環器難病の新たな再生医療戦略への取り組み
Keywords:若年性 (juvenility), 若年性遺伝子 (JAG) , 再生医療
「こどもは小さな大人ではない」という言葉は小児医学に携わる方々にとって当然のことと思われますが、こどもと大人の違いはどこから来るのでしょうか? ゲノムや細胞・分子などの基本的な構成因子や物理法則はこどもと大人ではまったく変わりはありません。その一方で、こどもには大人にはないアドバンテージがあり、弱く小さなこどもが生き延びる戦略になっています。その戦略には、成長や学習、可塑性や回復力などが含まれ、私たちのグループでは総称して「若年性 (juvenility)」と呼んでいます。若年性とは、体のサイズや機能にプラスの変化をもたらす働きであり、サイズや機能の変化がプラトーに達した大人では役割が小さくなります。子どもにはあり、大人にはない、臓器の成長・発達を可能にしている分子原理がわかれば、新たな再生医療技術として活用できると考えています。若年性の分子原理をすべて解き明かすには医生物学のみならず物理化学やインフォマティクスなどチャレンジングなアプローチが必須ですが、私たちが現在取り組んでいる研究の最新動向を御報告したいと思います。私たちはこれまでの研究で動物モデルなどを活用し、小児期に高発現している遺伝子群として「若年性遺伝子 (JAG)」 を同定しました。若年性遺伝子には機能未知なものが多く含まれましたが、これまでの研究で小児期の性質を本質的に担う要素として、臓器サイズコントロール機構・一次線毛・間葉系組織の制御・神経発達制御が浮かび上がってきました。また、若年性遺伝子の研究から、予想しないような知見が得られています。小児の病態を理解し、治療に寄与するには引き続き研究を展開することが必要ですが、若年性研究の現在地を皆様に報告して、さらなる前進に結びつけたいと思います。