[III-OR38-04] フォンタン術後遠隔期にみられる不定愁訴と循環特性に関する30事例の検討
Keywords:不定愁訴, フォンタン循環, フォンタン術後遠隔期
【背景】フォンタン術後遠隔期の不定愁訴は学齢期にある小児の生活に大きな影響を与える重要な要素である。【目的】フォンタン循環の循環特性と、フォンタン術後遠隔期にみられる不定愁訴の関連を明らかにする。【方法】保護者の同意を得たフォンタン術後遠隔期の小中高生30名を対象に、A病院で確認した不定愁訴19項目を定期外来受診の際に問診し、愁訴の原因となる疾患が医学的に疑われない場合に不定愁訴と判定した。循環特性は心臓カテーテル検査中に測定した動脈血酸素飽和度、中心静脈圧、駆出率、心拍数、心拍出係数を用いた。不定愁訴の有無についてはt検定、不定愁訴数と循環特性の解析には線形解析を用い、p値0.05以下を有意判定とした。【結果】不定愁訴は項目によって20%から60%までばらつきがあり、集中できない、やる気が出ないが最も高く、複数の不定愁訴を併せ持つ小中高生が多く見られた。心拍数は不定愁訴の数と正相関を認めた(p=0.009)。中心静脈圧で示される静脈うっ血、酸素飽和度は不定愁訴と明らかな関連は認めなかった。【考察】検査中の高い心拍数と不定愁訴の数、頻度に明確な関連を認めた事は、心不全増悪の背景因子である交感神経活動が優位となりやすい循環にある可能性を示唆した。集中できない、やる気がでない等の感情的な側面と頭痛等の身体的症状の関連は心身症としての側面も重要であることを示し、医療者側から問いかけ傾聴する場を設ける事が児の自発的表現を支援し、医療者による早期介入の一助になると考えた。【結論】フォンタン術後遠隔期の高い心拍数は、不定愁訴の数、発生頻度と関連した。高い心拍数と不定愁訴に着目した関りは、フォンタン術後遠隔期のこども達のQOLを高める可能性がある。