[III-P6-8-05] 冠動脈起始異常:形態に応じた最適手術
Keywords:冠動脈起始異常, 外科治療, 先天性心疾患
はじめに:冠動脈起始異常(Anomalous aortic origin of the coronary artery:AAOCA)は冠動脈起始もしくは走行に異常をきたす有病率0.1-1%の稀な先天性心疾患である。AAOCAのほとんどの患者は無症状のことが多いといわれているが、運動時に胸痛や失神を呈し発見されることもある。虚血、または不整脈の誘発によって、若年者の心臓突然死の原因となることがあり、偶発的に発見された場合、無症状であったとしてもハイリスク群に対しては外科的介入を検討するべき疾患である。左右の冠動脈どちらに起始異常があるか、壁内走行(intramural course)もしくは大血管間走行(interarterial course)の有無、入口部の形態的異常(開口部の大きさや形、orificeの高さ)などによって分類することができ、これら解剖学的形態に応じた術式の選択が勧められる。当科ではAAOCAに対する外科治療の第一選択はバイパスのような生理学的修復ではなく、解剖学的修復を行うことを第一選択としており、それぞれの形態異常に対応した手術方法を目指している。患者:当院で2013年から2021年の間で9例のAAOCAに対して手術治療を行った。症例は13歳から46歳、男性7例、女性2例、症状として、7例で失神がみられ、2例は心停止・蘇生が行われていた。心電図異常は5例に認め、6例に対して負荷試験を行い、うち4例で陽性であった。右冠動脈起始異常が4例、左冠動脈起始異常が4例、1例が単一冠動脈であり、全ての症例で大動脈壁内(intramural course)を走行していたため、unroofingを行い、良好な経過を得た。結語:AAOCAに対する外科治療は解剖学的特徴の正確な把握とそれに応じた術式により良好な結果が得られると考える。我々の施設でのAAOCAに対する外科的修復の適応と経験に文献的考察を加えて報告する。