[III-P6-8-06] 大動脈縮窄、大動脈弓離断に対する大動脈再建術の周術期合併症
Keywords:大動脈縮窄, 大動脈弓離断, 周術期合併症
大動脈縮窄、大動脈弓離断(以下CoA/IAA)は、周術期合併症としては乳び胸や反回神経麻痺、横隔神経麻痺などが挙げられ、治療に難渋する場合がある。そのためCoA/IAAの周術期合併症の頻度と成績を検討する。 2011年から2021年の期間に当院でCoA/IAAに対して大動脈再建術を施行した患者98例を対象とし、周術期合併症の頻度を集計し、手術内容や心疾患合併により差異がないか検討した。大動脈修復術を施行した98例のうちCoAは62例、IAAは36例であった。症例全体における周術期合併症の頻度は、乳び胸は17.3%(疑い症例含む)、反回神経麻痺は13.3%、横隔神経麻痺は5.1%であった。これらを単独and VSD合併群(n=64)とcomplex群(n=34)に分け、二群間における周術期合併症の発生頻度を比較した。周術期合併症の発生率は乳び胸で12.5%, 26.4%(p=0.08), 反回神経麻痺で16%, 9%(p=0.34), 横隔神経麻痺で3%, 5%(p=0.41)と有意差は認めなかった。死亡症例はVSD群で1例、complex群で3例認め、全体としては4.1%であったが、その死因は術前の状態や合併心疾患の要因が大きく、今回の検討している合併症とは関係ない部分によるものと考えられた。 同様の文献と比較すると、声帯麻痺に関する研究ではCoA/IAAで生じやすく41%の症例で声帯麻痺の合併を認めたと報告している。またCoA/IAAの症例に関して確認できたいくつかの研究では、死亡率は1.3-8.3%の報告を認めた。我々の研究では乳び胸を呈した症例が多く見受けられたが、当院においては胸水貯留に対しても積極的に治療介入しており、疑い例も多く含まれている可能性がある。 今回の検討でVSD合併群とcomplex群の間で周術期合併症の頻度は有意差を認めなかったものの、当院における合併症、死亡率に関して現時点においては満足できる結果であったのではないかと思われる。