[III-P6-8-08] 外科的大動脈弁置換術後に一過性の遅発性高度房室ブロックをきたした一例
Keywords:大動脈弁置換術, 房室ブロック, PDE-3阻害薬
【背景】経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)では遅発性房室ブロック(AVB)合併の報告は散見されるが、外科的大動脈弁置換術(SAVR)においては見受けられない。今回SAVRに合併した遅発性AVBの症例を経験したので報告する。
【症例】13歳男児。月齢1より大動脈二尖弁、先天性大動脈弁狭窄症の診断で経過観察とされていたが、大動脈弁狭窄進行を認めたため手術加療の方針となった。
【手術】身長 158.9cm、体重 40.0kg、BSA 1.358m2。弁尖を切除すると、ATS 22m sizerがjust sizeであったため、人工弁:ATS(AP360) 22mmをnon-Everting mattress法によりSupra-annular positionに縫着した。手術時間 364分、人工心肺時間 178分、大動脈遮断時間 130分。大動脈遮断解除後は洞調律で心拍再開した。
【周術期経過】術当日に抜管し、術後4日目にドレーン抜去、ICUを退室した。不整脈は認めず経過は良好であったが、術後14日目より高度AVBを頻回に認めた。AVBは安静時を中心として出現し、軽度の目眩感を伴っていた。術後20日目にシロスタゾール内服開始しAVBは消失、術後31日目に内服終了後も再燃は認めなかった。
【考察】SAVR後のAVBは一般的に膜様中隔付近の直接的障害や人工弁による伝導路の圧迫を原因として術直後に発症する。TAVI後のAVB合併例の組織学的検索では人工弁の圧排による血腫が伝導路を障害していたという報告がある。本症例は人工弁挿入による伝導路の直接的圧排に加えて、伝導路周囲の血腫形成と抗凝固療法による血腫増大が原因となった可能性がある。またPDE-3阻害薬は洞房結節の伝導促進による陽性変時作用を持つことが知られているが、そのほかに房室結節の伝導能を促進することが報告されている。本症例も臨床経過的にはAVBの消失は、シロスタゾール内服開始と一致した。
【結語】SAVR術後においても遅発性AVBを発症した一例を経験した。本症例のAVBに対してはシロスタゾール内服が奏功した可能性が示唆された。
【症例】13歳男児。月齢1より大動脈二尖弁、先天性大動脈弁狭窄症の診断で経過観察とされていたが、大動脈弁狭窄進行を認めたため手術加療の方針となった。
【手術】身長 158.9cm、体重 40.0kg、BSA 1.358m2。弁尖を切除すると、ATS 22m sizerがjust sizeであったため、人工弁:ATS(AP360) 22mmをnon-Everting mattress法によりSupra-annular positionに縫着した。手術時間 364分、人工心肺時間 178分、大動脈遮断時間 130分。大動脈遮断解除後は洞調律で心拍再開した。
【周術期経過】術当日に抜管し、術後4日目にドレーン抜去、ICUを退室した。不整脈は認めず経過は良好であったが、術後14日目より高度AVBを頻回に認めた。AVBは安静時を中心として出現し、軽度の目眩感を伴っていた。術後20日目にシロスタゾール内服開始しAVBは消失、術後31日目に内服終了後も再燃は認めなかった。
【考察】SAVR後のAVBは一般的に膜様中隔付近の直接的障害や人工弁による伝導路の圧迫を原因として術直後に発症する。TAVI後のAVB合併例の組織学的検索では人工弁の圧排による血腫が伝導路を障害していたという報告がある。本症例は人工弁挿入による伝導路の直接的圧排に加えて、伝導路周囲の血腫形成と抗凝固療法による血腫増大が原因となった可能性がある。またPDE-3阻害薬は洞房結節の伝導促進による陽性変時作用を持つことが知られているが、そのほかに房室結節の伝導能を促進することが報告されている。本症例も臨床経過的にはAVBの消失は、シロスタゾール内服開始と一致した。
【結語】SAVR術後においても遅発性AVBを発症した一例を経験した。本症例のAVBに対してはシロスタゾール内服が奏功した可能性が示唆された。