[III-P6-8-11] 重症乳児特発性僧帽弁腱索断裂に対して僧帽弁形成術を施行し得た二手術例:Annuloplastyの重要性
Keywords:乳児特発性僧帽弁腱索断裂, 僧帽弁形成術, segmental annuloplasty
乳児特発性僧帽弁腱索断裂は,生後4ー6ヶ月の乳児に発症し,急性心不全から早期外科的介入を必要とする. 僧帽弁形成術が第一選択となるが,約30%は機械弁置換を要する重症疾患である.当院で2021年に連続して経験した2症例の術式と経過を比較検討する. 【症例】症例1:7か月,7.7kg,女児. A1/P1, P2-P3 prolapseによるSevere MRに対し, Alfieri法による弁形成を施行. 術直後MRはmild以下となり,全身状態は著明に改善した. しかし, 哺乳増量に応じて徐々に弁輪拡大が進行し, POD25に再手術を施行した. Alfieri stitchを再縫合したのちSegmented Annuloplastyを追加した. MRは消失,僧帽弁流入血流は1.7m/sと制御され, 以後経過良好にて退院となった.症例2: 6か月,6.3kg,女児.P1,P2の腱索断裂によるSevere MRおよび三尖弁後尖の腱索断裂によるModerate TRに対し, 僧帽弁・三尖弁ともに人工腱索を用いた弁形成と僧帽弁に対してはSegmented Annuloplastyを施行した. 術後MR/TRはmild/trivial,僧帽弁流入血流は 1.0m/sに制御され,術後経過良好にて退院となった. 【考察】症例1の初回術後管理においては,哺乳量の増加に伴い急激な弁輪拡大をきたし,Alfieri法による弁形成が容量による水平方向への弁尖へのストレスに耐え切れなかったと推察された. それに対し,症例1の再手術および症例2では容量負荷の経過で僧帽弁輪拡大を認めず, MRの増悪なく退院に至った. 【結語】人工弁輪を使用できない乳児の僧帽弁形成術において, Segmented Annuloplastyは弁輪成長の余地を残しつつ弁輪拡大を抑制し,再建弁尖のストレス軽減のために極めて有用である.