[III-P6-8-12] 若年のマルファン症候群患者に対する自己弁温存大動脈基部置換術
Keywords:自己弁温存大動脈基部置換術, 若年マルファン症候群, 大動脈弁輪拡張症
【背景】マルファン症候群患者において大動脈弁輪拡張症に伴う大動脈解離や大動脈瘤破裂は主要な死因であり、これらを未然に防ぐ事がこの患者群の生命予後を改善する。これまで大動脈弁輪拡張症には人工弁で大動脈弁置換するBentall手術が外科治療の標準術式であったが、近年、成人例での自己弁温存大動脈基部置換術で安定した成績が得られる様になってきた。このため、その適応は拡大傾向にある。若年のマルファン症候群患者ではBentall手術に伴う生活制限や妊娠を考慮すると自己弁温存大動脈基部置換術で得られる利点は多い。【目的】若年のマルファン症候群患者で手術適応のある大動脈弁輪拡張症に対する自己弁温存大動脈基部置換術の有用性を検討する。【方法】2020年12月から2021年12月までに当小児心臓血管外科チームで10代のマルファン症候群患者3例に対して自己弁温存大動脈基部置換術を行った。本患者群で大動脈基部径、術前後大動脈弁逆流量、死亡率、主要な合併症、挿管日数、ICU滞在日数、在院日数を検討した。【結果】対象は男性2人、女性1人であった。それぞれ12歳、13歳、16歳であった。David手術が2例、Yacoub手術が1例に行われた。全症例を上行大動脈のみ24mm人工血管で置換した。死亡例はなく、主要な合併症も認めなかった。術後に1例で可逆性後頭葉白質脳症症候群、1例で発作性心房細動を認めた。大動脈弁逆流量は術前軽度から術後消失であった。大動脈基部径(51±8.9mm)、挿管日数(0.7±0.6日)、ICU滞在日数(5±1日)、在院日数(21±3.6日)であった。【考察】全症例で安全に自己弁温存大動脈基部置換術を行えた。大動脈弁の穿孔や逸脱等の異常は軽度であり、弁尖に対する介入は不要であった。【結論】若年のマルファン症候群患者にも自己弁温存大動脈基部置換術は有効な術式である。早期に介入する事によって良好な大動脈弁の状態で手術を行え、良好な遠隔成績を得られる可能性がある。