第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

QT延長症候群・ブルガタ症候群

一般口演(I-OR12)
QT延長症候群・ブルガタ症候群

2023年7月6日(木) 14:30 〜 15:40 第7会場 (G314+315)

座長:鈴木 博(新潟大学医歯学総合病院), 座長:馬場 礼三(中部大学 生命健康科学部)

[I-OR12-05] 低K血症の悪化からGitelman症候群と診断したQT延長症候群の一例

二宮 由美子, 田中 裕治, 吉永 正夫 (国立病院機構 鹿児島医療センター 小児科)

キーワード:低K血症, Gitelman症候群, QT延長症候群

【背景】Gitelman症候群は、遠位尿細管上皮細胞膜に発現する輸送体をコードする遺伝子の変異により発症する。乳幼児期に診断されることは稀で、学童期以降に初めて低K血症や低Mg血症による症状で発見されることが多い。今回、7歳でQT延長と診断された男児が、約10年に亘る経過観察中に低K血症が顕在化し、精査の結果Gitelman症候群と診断した例を経験したので報告する。【症例】18歳男性。失神や痙攣の既往なく、突然死の家族歴なし。7歳時、学校心臓検診をきっかけにQT延長と診断された。初診時血圧103/54 mmHg、安静時QTcF 0.465、運動負荷4分後QTcF 0.508であった。遺伝子検査で変異は同定されなかった。無治療で経過観察中、明らかな低K血症は認めなかった。12歳時、K 3.4 mEq/Lを最後に受診が途絶えた。17歳で再診し、K 2.8 mEq/Lと低K血症およびQT延長の悪化を認めた。K製剤とβブロッカーの内服を開始したが改善に乏しかったため、低K血症の原因精査を行った。レニン活性 5.8 ng/mL/hr、アルドステロン(RIA) 97.1 pg/mL、利尿剤負荷試験の結果から遠位尿細管障害が疑われ、代謝性アルカローシスや低Mg血症、低Ca尿症も認め、Gitelman症候群と診断した。神戸大学にSLC12A3遺伝子の検索を依頼中である。現在抗アルドステロン薬を追加したところ、K値は正常化し、QT延長の明らかな改善を認めている。【考察】Gitelman症候群の約40%にQT延長が合併するとの報告がある。本症例では、QT延長症候群の診断から約10年後に低K血症が顕在化した。低K血症の鑑別診断には血液検査と利尿剤負荷試験が有用であった。【結語】QT延長症候群の管理には定期的な血液検査が必要であり、明らかな症状がない場合でも低K血症が続く症例は、Gitelman症候群も鑑別診断に挙げて精査する必要がある。