[I-P04-3-03] 新たな再生治療戦略の確立を目的とした若年期トランスクリプトームの実像解明
キーワード:機能的トランスクリプトーム解析, 臓器再生, 若年性遺伝子
臓器移植の対象となるような重篤な循環器疾患の再生治療戦略を確立することを目指し、動物モデルを活用した新規の生命現象やその分子メカニズムについて研究を行っている。小児期には臓器の「成長性」や「成熟能」など、成人期にはない数々の特性があり、総称して「若年性 (juvenility)」 と位置付けている。これまでに若年性の分子実体を明らかにするために包括的トランスクリプトーム解析をマウス心筋細胞で行い、小児期に特有の分子現象として「年齢依存的スプライシング (age-dependent alternative splicing, ADAS)」・「BEX1による相分離」・「若年性リンクRNAによるエピゲノム調節」について報告した。機能的トランスクリプトーム解析から得られたこれらの知見は、小児期の細胞が成人期のものと異なる性質をもつことを示した。これらの因子が実現する小児特有の細胞状態を 「細胞若年性 (cellular juvenescence)」 と位置付け、実像解明に取り組んできた。これまでにメタボロミクスや包括的リン脂質解析により、小児期の細胞を特徴づける代謝動態について知見が得られている。これらの解析により、細胞若年性を構成する複数の新規因子の同定につながっている。さらに、解明された分子機構を標的とすることで、小児期に活発な同化や細胞の増殖・成熟を調節することが可能であると考えられる。このような若年期に特有の生命現象を標的とした心筋再生の治療戦略に取り組んでおり、最新の知見について報告する。