[II-OR20-02] 大血管転位症に対するBay window法による冠動脈移植後遠隔期にbay window channelは瘤化するか
キーワード:大血管転位, 冠動脈移植, Jatene手術
【背景】大血管転位症に対する大動脈スイッチ手術(ASO)成績は冠動脈移植の成否が重要である。単一冠動脈、短い主幹冠動脈、同一sinusから複数の冠動脈起始、壁内走行、大動脈弁と肺動脈弁交連部のずれなどのcomplex coronary artery anatomy(CCAA)に対し、trap-door法を改良したBay window technique(BWT)を開発し、2001年から臨床応用してきた。Bay window channel(BWC)を形作ることによりkinkやoverstretchのない冠動脈移植がCCAAに対して可能となる。我々はこれまでBWTによるASO術後中期の良好な成績を報告してきたが、遠隔期の成績、特にBWC瘤化の有無は不明である。今回、最長20年の遠隔期におけるBWTの成績と瘤化の有無について検討した。【方法】2001年から2022年の間にBWTを用いてASOを施行した43例(男児29例、女児14例)を対象とした。手術時体重は中央値3.1(1.7-4.5)kg、手術時日齢は中央値13(5-78)日。診断は大血管転位症(TGA)1 型:18 例、TGA2 型:11 例、TGA 型両大血管右室起始症 14 例。 冠動脈走行は Shaher 1型:25 例、2bおよび7b型 :4 例、4型3例、3a型2 例、その他5例。術後のBWC形態評価として26例でCT、15例でカテーテル検査を施行。全例で術後 12 誘導心電図検査を施行、うち8例で運動負荷心電図を施行。術後心筋シンチは10例で施行した。【結果】観察期間中央値は7.9(0-20.9)年。術後CT撮影およびカテーテル施行は、各々中央値6.3(0-20.8)年後、2(0-12)年後。全例生存し、冠動脈に対する再介入症例なし。術後画像評価を行った症例全例で冠動脈のkinkや狭窄なく、BWCの瘤化を認めなかった。術後の12誘導心電図では全例でST変化なく、運動負荷心電図を施行した8例においてもST変化なし。心筋シンチ施行10例全てで虚血を示唆する所見はなかった。【結語】BWTはCCAAに対しても良好な遠隔成績の得られる冠動脈移植法である。BWCの瘤化は全例で認められなかったが、さらなる遠隔期の検討が必須である。